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2019年8月20日

IHSマークイット、MaaS時代のオートモーティブ・テクノロジートレンドで記者説明会開催

IHSマークイットは、「MaaS時代のオートモーティブ・テクノロジートレンド」をテーマに記者説明会を行った。MaaS(サービスとしてのモビリティ)時代の到来など、モビリティサービスの成長と自動運転技術の進化が加速する中、今後の技術トレンドや課題、業界構造の変化の可能性について見通しを立てた。

まず、同社のグローバル・トランスポート&モビリティ・プラクティスリーダーのトム・デ・ボリシャワー氏が「新時代のモビリティ」をテーマに考察を述べた。自動車業界については、貿易協定や関税問題などの地政学的変動要因が特に多く、「長期的計画を策定しづらい不確実性の高い産業」との見解を示した。排出ガス規制や自動運転車に対する各種規制に関しても、技術要件対応に加えて、投資の回収がいつになるかが不明な現状を指摘した。

同氏は「自動車分野における政策変動はとどまることがなく、モビリティや自動運転領域の重要性が低下してきている。自動車産業としては難しい局面にある一方で、モビリティサービスとしては面白い側面が見えている」との考えを示した。

今後の焦点は「移動距離」「所有形態」 MaaSが大きな伸長を見せている現状については、「都市化、高齢者人口増、気候変動、シェアリングエコノミーの台頭などで自動車文化が変化し、『アンチ・カー』の兆しが見えている。モビリティのエコシステムが拡張傾向にある中、今後の焦点は『所有する車』から『移動距離』『所有形態』に変化していくだろう」と分析した。

MaaS拡大の流れを前提に、自動運転車ブームがピークに達したように見える一方で、ロボットタクシーの進化は今後も継続すると見通し、安全性さえ担保されればロボットタクシーが世界の自動車産業の構造を破壊すると想定した。ロボットタクシーのエコシステムを、自動運転システムサプライヤー、車両サプライヤー、フリート事業者、モビリティプロバイダー、コンテンツプロバイダーの5層に定義。同氏は「今後収益の柱となりそうな階層は、オンデマンド型モビリティを提供するプラットフォームを構築するモビリティプロバイダーに加え、広告やアメニティを提供するコンテンツプロバイダーという新たな階層だろう。ロボットタクシーは、規制整備と安全性を確保する自動運転技術が整えば、すぐにでも世界の自動車産業の構造を変えるだろう」と将来を見通した。

[技術共通化で自動車の差異なくなる] 一方で、同社オートモーティブ・サプライチェーン&テクノロジーアソシエイトディレクターのデービッド・トリパニー氏は「自動運転社会における人間の役割」について説明し、ユーザーエクスペリエンスこそがブランドを定義するとした。

同氏は「自動運転化の進展にともなう各種規制や基準への対応で、技術の共通化による自動車の差異がなくなる。規制のみがけん引役になれば、差別化の余地が減り、ブランドは死のリスクを負うことになる」と示唆。このため、「自動運転環境下における差別化には、ドライビング体験の個人化、安全性などの信頼構築、使い勝手の良さがポイントになる。自動運転レベル2~3で培った信頼に基づいて、最終的にレベル5に到達した際に自動運転は爆発的に普及するだろう。自動車メーカーは、自動運転の信頼醸成には時間がかかることを認識するべきだろう」との見解を示した。

同社の調査によれば、自動車とのコミュニケーション手法における入力手段として最も好まれるのがタッチスクリーンで、次いで音声認識との結果が出た。これについて同氏は「音声認識技術が現在は貧相過ぎる。自動車メーカーが自動運転車の使い勝手を高めるには、自然言語認識や音声認識領域の技術レベル向上が必須だ」と力を込める。

[音声認識技術のレベル向上が必須] また、自動運転車の信頼性に関する同社の調査では、技術レベルの高い米国やドイツで否定的もしくは無関心層が約50%近くを占める一方で、中国やブラジル、インドでは前向きな反応が多く見られた。自動運転に対するドライバーの段階的な信頼構築には、「バーチャル・パーソナル・アシスタントの活用や映像ディスプレーなどによる実証やデモンストレーションが有効」と締めくくった。

日刊自動車新聞8月15日掲載

カテゴリー 展示会・講演会
主催者

IHSマークイット

対象者 自動車業界