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2019年8月12日

カーナビ各社、新事業領域で存在感 先進技術・デジタルソリューションに商機

カーナビゲーション各社が、〝カーナビ以外〟の分野で存在感を高めつつある。自動運転やライドシェア、セキュリティーといった先進技術や新しいサービスの領域で商機を探る。異業種やベンチャー企業などと協業するケースも増えており、他社の知見を取り入れた、これまでとは異なる形のビジネスも登場してきた。

背景には、将来、縮小が予測されるカーナビ市場への危機感がある。各社ともカーナビに代わる商材を一刻も早く作り上げたい考えだ。

縮小市場に危機感 「情報がスマートフォン(スマホ)に集約され、ナビやオーディオといった既存のハードウエアが必要とされない時代がくるかもしれない」。アルプスアルパインの米谷信彦副社長はハードの展望に警鐘を鳴らす。電子情報技術産業協会(JEITA)によると、2018年のカーナビの国内出荷実績は前年比5・5%増の614万4千台。出荷数自体は16年以降増加し続けているが、スマホの無料カーナビアプリの台頭で、市販市場は厳しい状況が続いている。純正品も外部とのコネクテッド機能やヘッドアップディスプレー対応などで開発費が増えつつある。

このあおりを受け、カーナビメーカー各社は再編を余儀なくされた。アルパインはアルプス電気と1月に経営統合したほか、今春には、パイオニアが香港ファンドのベアリング・プライベート・エクイティ・アジア(BPEA)の、クラリオンが仏フォルシアの傘下にそれぞれ入り、再スタートを切った。

事業領域でも新しい可能性を模索している。パイオニアは「今後伸びてくる分野」として自動運転分野に注力する。オランダの地図大手ヒアテクノロジーズと提携し、自動運転時に重要になるHDマップ(自動運転用高精度地図)の開発を進めているほか、3DLiDARを活用した自動運転の実証実験にも参加。

茨城交通(任田正史社長、茨城県水戸市)やKDDIなどとともに今年6月に茨城県常陸太田市で行った実証実験では、LiDARを車両だけでなく路肩にも設置し、ルート上の障害物検知に活用した。「距離が正確に測れるのがLiDARの魅力だが、車両に搭載するのはまだ先になるだろう。まずは監視や倉庫内のロボット用など車載以外での用途を見込んでいる」(パイオニア)。

クラリオンも日立オートモティブシステムズ(ブリス・コッホ社長&CEO、東京都千代田区)と共同で自動遠隔出庫システム「ロングレンジサモン」を開発。入庫時に経路を記憶させておくことで、スマホで出庫時に車を呼び寄せることができる。将来的には駐車を無人、自動化することも見越している。

[脱・ハード重視] デジタルを使ったソリューションビジネスで、19年度100億円規模の売り上げを目指すのはJVCケンウッド。今年4月に専門部署を立ち上げ、すでにディー・エヌ・エー(DeNA)などとタクシー配車システムを立ち上げている。また、ライドシェア大手グラブのドライバー向けに通信型ドライブレコーダーを使った安全サポートも始めた。ハード機器だけでなく、コールセンターなどシステム全般をまとめて提供することで、付加価値を設ける。「既存のビジネススタイルにとらわれず、他社の技術も積極的に取り入れていく」(DXビジネス事業部の鎌田浩彰部長)方針で、今後カーナビなどに次ぐ「第4の柱」に育てたい考えだ。

アルプスアルパインは、フリービット(田中伸明社長、東京都渋谷区)と共同でデータの改ざんを防ぐログ保管技術「ザ ログ」を開発した。ブロックチェーン(分散型台帳技術)を活用することで、他者からデータを守るセキュリティーシステム。中古車のメーター改ざん防止や店舗での顧客情報管理などでの導入を見込んでいる。「既存の電装機器はボリュームが変化し、価値が落ちる可能性がある。その一方で、車に乗る前後のサービスなどコネクテッドの分野は広がりがある」(米谷副社長)と商機を見いだす。

新領域の製品やサービスは将来的な需要拡大を見越して投入しているため、未知数なところが多い。これまで手を付けていなかった分野も多く、手探りで進めているところもある。ただ、ハード重視の従来のカーナビメーカーから転換できなければ、生き残るのは難しい。

日刊自動車新聞8月8日掲載

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