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2019年8月7日

10月に豪州でソーラーカーレース 若きエンジニアら知恵と技術を結集 日本から大学、高校チームが参加

若きエンジニアたちが3千㌔㍍の大地を駆け抜ける―。10月にオーストラリアで開催されるソーラーカーレース「2019ブリヂストンワールドソーラーチャレンジ(BWSC)」には、日本の大学や高校から4チームが出場する。ソーラーカーレースは、車両の空力性能や耐久性、軽量化で勝敗が決まると言われている。

自動車の開発に通じるところも多い。トップチームの中には国や大学をあげて取り組んでいるところもあり、未来の自動車産業を支える人材も多く輩出している。世界の強豪たちと渡り合うため、日本の代表選手たちは培ってきた知恵と技術を結集し、大会に臨む。

レースは約5日間かけて、ソーラーカーでオーストラリア大陸を縦断する。砂漠を中心としたアウトバックがコースとなり、車両の耐久性やスペックが勝敗を大きく左右することになる。また、空気抵抗を極力減らし、風を味方につけるようなボディー構造も重要になってくる。

この点に徹底的にこだわったのは名古屋工業大学チームだ。アッパー部の先を下げ、三次元曲面としたことで空気抵抗を極限まで抑えた。特殊な加工が必要だったため、これまで手作りで行っていた作業を専用の工作機械に変更。設計図に忠実にマシンを改良した。チームマネージャーの磯合凌弥さんは「軽量化の先はまだあると思う。ゆくゆくは素材自体を見直したい」と話しており、シリコンパネルの見直しも長期的に行う方針だ。創部27年目、前回は12位でゴールした。「今回はトップ5以内を狙いたい」と大幅なランクアップを狙う。

「勝つ車に仕上げた」と自信をみせるのは工学院大学チーム。動物の鷲(わし)をイメージしたボディーには、F1でも使用される軽量の炭素繊維を用いることで、レーンチェンジをスムーズに行えるようにした。表面積を小さくして空力性能を高め、時速130㌔㍍まで加速する。ソーラーパネルには人工衛星用のコンパクトな太陽光パネルを採用する。同校の強みはマネジメントにある。技術チームやドライバーチームだけでなく、広報チームも設け、部の活動を積極的に発信する。部員は約400人。「オーストラリアに行けるメンバーは選抜の30人だけ。部内でも競争があり、技術だけでなく人間力の醸成にもつながる」と同校の濱根洋人監督は話す。今年は創部10周年の節目の年でもある。「優勝しか見ていない」と栄冠を目指す。

十分な人員やスポンサー企業がついている大学が多い中、最少人数で勝負に挑むのが広島県の呉港高校だ。今回の日本メンバーで唯一の高校チームとなる。部員は監督も入れて9人で、放課後の部活時間で活動している。ベニヤ板を使った型取りを行い、その型に沿ってカーボンを張り込む作業や、金属の削り出しなどは生徒が行う。モーターやパネルは前年のモノを再利用することもあり「限られた予算と時間で工夫を凝らしている」(武田信寛監督)。地面と平行になるような形状のボディーには、8分割したソーラーパネルを張り付け、どれかが壊れても発電に支障がないようにした。現在はスターティングをどれだけスムーズに切れるかに取り組んでおり、学生たちが最終メンテナンスを行っていた。

7月に行われた走行会では、3校ともソーラーカーの出来栄えに手応えを感じている様子だった。名工大の磯合さんは「部員だけでなく、先輩たちや協力してくれた人たちに感謝して臨みたい」と想いを話していた。工学院は悲願の初優勝を狙う。呉港高校の武田監督は「自分たちのペースを守って走りたい」とレースを楽しみながら前回果たせなかった完走を目指す。それぞれの想いを乗せ、ソーラーカーは10月13日にスタートを切る。

日刊自動車新聞8月3日掲載

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
主催者

2019ブリヂストンワールドソーラーチャレンジ(BWSC)

開催地 オーストラリア
対象者 キッズ・小学生,中高生,大学・専門学校,一般,自動車業界