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2019年8月2日

大型2社 自動運転高度化へ

外資系商用車メーカーが、自動運転技術の高度化を急いでいる。ダイムラーグループの三菱ふそうトラック・バスは2019年秋に国内初となる商用車での自動運転「レベル2」(部分的な自動運転)を実用化する。ボルボ・グループのUDトラックスは8月、「レベル4」(限定地域での完全自動運転)を国内で実証実験する。自動運転は、深刻化する人手不足への解決手段として期待が高まっている。グループの知見を集め日本の道路に最適化しながら自動運転技術の早期確立を目指す。

[三菱ふそう、今秋にレベル2実用化] 三菱ふそうは、今秋に大型トラック「スーパーグレート」で、大型車として初めてレベル2を実用化する。主に高速道路での同一車線上での運転であれば、運転操作をシステムで行うというもの。

レベル2の技術は、乗用車では採用が進むが、商用車では実用化されていなかった。車幅や重量の違いによる技術的な難しさがあったためだ。

日本の車線幅が3・2㍍なのに対して、大型トラックの車幅は2・5㍍ある。車幅が1・5~1・8㍍の乗用車と比べて余裕がない。また重量が重いためにハンドル操作に対する車両の挙動も遅れやすい。カーブなど車線状況を「かなり予測して、精度高く制御しないと、すぐに車線から逸脱してしまう」(開発本部・メカトロニクス開発部の木下正昭マネージャー)。

そこで、長距離を検知できるセンサーで車両の走行軌跡の予測を可能にすることで解決した。採用するセンサーは、ダイムラーが昨年発売した大型トラック「アクトロス」と同じもの。ハードウエアは完全共通で、ソフトウエアも「7~8割は共通。そこに白線など日本の道路状況に合うよう付け加えた」(同)という。

独ダイムラーのトラック部門は、法整備など実証実験のしやすさから自動運転の開発の主体を米国に置いている。三菱ふそうはグループの技術を日本の道路状況に最適化させながら、25年頃にレベル4の実用化を目指す。

[UDトラックスはレベル4実証実験] 一方で、ボルボグループのUDトラックスは、20年までに特定用途でレベル4の実用化を目指している。ボルボは鉱山を中心にレベル4の実証実験を行っている。傘下のUDトラックスはボルボが蓄積してきた自動運転のノウハウを国内向けにアレンジし、8月に日本通運やホクレン農業協同組合連合会と実証実験を始める。レベル4を搭載した大型トラック「クオン」を北海道斜里町にあるホクレンの製糖工場と集積施設内の私道の約2㌔㍍を走らせて技術を確認する。

同時に自動運転車のオペレーションやビジネスモデル構築に向けた課題も実証実験を通じて抽出したい考えだ。実験ではトラックは自動走行するが、荷物の積み込みを想定した時間は実際に停車させる。実運用した場合に、自動運転トラックがどの程度効率化に貢献するかを検証する。

商用車各社は、運送業界で深刻化する人手不足を解決したり、ドライバーの負担を軽減する技術として自動運転技術の開発を急いでいる。特に外資系商用車2社は、グループが先行して実証を行い、様々な環境下での走行実験も積み重ねている。これを生かして自動運転車をいち早く日本市場に投入し、業界をリードしていく構え。

日刊自動車新聞7月30日掲載

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
主催者

三菱ふそうトラック・バス㈱、UDトラックス㈱

対象者 自動車業界