2019年7月13日
ショーワ 「ステア・バイ・ワイヤ―・システム」(SBWS)、レベル4想定の高い安全、信頼性を担保 車室空間の設計自由度が大幅向上
[リアルな操舵感を] ショックアブソーバーやパワーステアリングを開発・製造するショーワは、高度な自動運転車に対応するステアリングシステム「ステア・バイ・ワイヤ―・システム」(SBWS)の開発に注力している。自動運転「レベル4」以上を想定した高い安全性と信頼性を担保する一方、車室空間のレイアウト性の飛躍的な向上とドライバーの快適性の両立を目指している。リアルな「ステアリングフィール」(操舵感)を重視し、2020年代中盤以降の実用化を目指す。
従来の電動式パワーステアリングシステムは、ハンドルとステアリングギアボックスをシャフトで機械的につなぐが、同社のSBWSは、ステアリングシャフトをなくし、ハンドルと反力アクチュエーターで構成する上部アクチュエーターと下部の操舵アクチュエーターを分離独立させ、両者を電気信号で連動させる。ハンドルと操舵アクチュエーターとの間に機械的な接続がないため、上下のアクチュエーターが各々自由に制御セッティングすることが可能になる。
従来式では、ハンドルを回すとタイヤの舵角が自動的に固定されるが、SBWSでは可変レシオ制御におけるレシオの設定自由度が高い。例えば少しハンドルを回すだけで交差点を曲がることが可能になるなど、楽に運転できる。車速に応じたレシオの任意設定も可能だ。低速時には「クイック」レシオで車両の取り回し性を向上させる一方で、高速時には過度な応答を抑制する「スロー」レシオを選択できる。自動運転モードではタイヤに連動したハンドルの動きを切り離すことでドライバーの快適性を確保するほか、ドライバーが自身で運転したい場合はマニュアルモードの選択も可能だ。
[幅広い用途に使用] 一方でSBWSは、ハンドルとの機械的接続がないため、ハンドルの位置に関係なく共通の操舵アクチュエーターを使える。ハンドルの位置、さらには運転席の位置を自由に設定可能なため、自動車メーカーにとっては車室空間の設計自由度が大幅に高まる。四輪車を基本に、操舵が必要な乗り物なら幅広い用途を想定できる。
システムとしての安全性と信頼性については、高い冗長構成でこれを確保し、自動運転「レベル4」以上を想定した開発を進めている。上部の反力アクチュエーターでは、電源や舵角検出機能で三重の冗長構成とするほか、反力演算やモーター駆動など多くの機能で冗長構成を二重とする。操舵アクチュエーターにおいても、大半の機能で冗長構成を三重とすることで、安全・信頼性対策に万全を期す。
同社がSBWSでこだわるのは「まるで普通のハンドル操作のようなリアルなステアリングフィール(操舵感)」の実現で、油圧ステアリング並みの滑らかな操舵感の創出を目指している。同社は長年サポートするレース活動や自社テストコースで蓄積したデータを強みに、独自のステアリングフィール技術を進化させ、反力アクチュエーターに予圧機構付きウォームギア減速機を使うことで、機械的なフリクションを擬似的信号で付与している。ショーワの杉山伸幸社長は「車を操る楽しみにおいて、ステアリングにおける機械的なフリクション要素は重要だ。完全自動運転ではこの要素は必要ないが、『運転する楽しみ』が求められるうちは、この技術が生かせる」とし、ステアリング技術を進化させた独自の「フィール技術」に自信を見せる。
日刊自動車新聞7月10日掲載
カテゴリー | 白書・意見書・刊行物 |
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主催者 | ㈱ショーワ |
対象者 | 自動車業界 |