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2019年7月11日

豊田通商、AIで車両外観・底部検査 イスラエル製装置の扱い開始

豊田通商は、人工知能(AI)が車両の外観や底部を即座に検査する装置の取り扱いを始めた。まずは中古車オークション(AA)事業者に売り込み、将来は製造ラインの外観検査などに用途を広げたい考え。製造をはじめ整備、AAなどの分野で車両検査は不可欠。人手不足の中、一部ではあるが、熟練者の目視や経験に頼る車両検査の自動化が進む可能性がある。 豊通が取り扱いを始めた装置は、イスラエルで2016年に創業した「UVeye社」(テルアビブ市)がもともと、テロ対策用として開発した。ゆっくりと移動する車両の底部をカメラで連続撮影し、擬似的な3次元データを生成。密輸品や爆発物などが取り付けられていないかを即座に検出するものだ。これまでに世界の約10カ国で70システムの納入実績があるという。

UVeye社の強みは、1台当たり数千枚にもなる撮影画像をもとに擬似的な3次元データを瞬時に生成する技術と、こうしたデータを学習させたAIによる異常検出アルゴリズム(計算手順)だ。クラウド上のAIがエンジンや変速機、マフラーといった部位ごとの特徴を学習し、錆やオイル漏れ、部品の欠落といった異常を判断する。正常な状態を車種ごとに照らし合わせる方式ではないため汎用性も高い。

車体外観も基本的な理屈は同じ。3次元データ化こそしないものの、大量の撮影画像をAIが細かく比較し、傷や凹みを判別する。タイヤの撮影画像からは空気圧のほか、側面の刻印からサイズや製造年月を割り出せるという。

この技術に着目した豊通は先月、同社に300万㌦(約3億2千万円)を社内ファンドから出資。国内販売権も取得し、子会社「豊通オートモーティブクリエーション(TAC)」を通じて売り出した。導入費用は仕様によって異なるが数百万円ほど。この他に1台当たりの料金がかかる。必要な判別項目や水準に合わせて1~2カ月ほどデータを学習させる必要もあるが、TACによると、AA検査会社がすでに興味を示しているという。AA業界は検査員不足に悩まされており「一部でも検査を自動化できれば、人間はそのほかの検査に集中できる」(最大手のユー・エス・エス)からだ。

豊通は今後、センシング技術の進化とともに新たな検査装置をUVeye社と共同開発し、装置の販売先を広げていく考え。例えば、エンジンなどの作動音をAIに学習させれば異常を判別できる可能性がある。また、TACの担当者は「集めたデータは研究開発からディーラー、保険会社、あるいは公共インフラなどにも使えるのではないか」と話している。

日刊自動車新聞7月8日掲載

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
主催者

豊田通商㈱

対象者 自動車業界