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2019年6月20日

通信機器メーカー、5G モビリティに商機 高速通信技術生きる

大手通信機器メーカーが、5G(第5世代移動通信システム)をフックに自動車市場に参入している。膨大なデータを低遅延かつ高速で送受信する5Gでは、対応する通信ネットワーク網の構築や周囲の環境整備が普及の要になってくる。パソコンやスマートフォンなどで培ってきた通信技術を、自動車の分野でも活用する考え。現在は自動車関連での収益はわずかな企業が多いが「5Gの技術が生かせる市場は限られている。モビリティはその最たるもの」(富士通)と捉えており、5Gをきっかけに自動車関連事業を成長事業に育てたい考えだ。

[サーバー連携で通信負荷分散] 12~14日に幕張メッセ(千葉市美浜区)で開催された展示会「インターロップ東京2019」では、通信機器メーカーが5Gに関するさまざまな技術を披露した。
富士通は、車両から取得したデータをすぐにクラウドに送るのではなく、車両の近くにあるコンピューター(サーバー)で分析、精査してから送信する「エッジコンピューティング」のプラットフォームを開発中だ。通信コストや遅延の低減に有効な手法と言われている。5G時代のコネクテッドカーは大量のデータの送受信が必要となる。例えば、渋滞が発生し、1カ所のサーバーに車両が集中した場合、近くのサーバーに負荷を分散したり、データを取得しきれなかった時に、次のサーバーに取得を要請するなどサーバー同士の連携が重要になってくる。富士通では、サービス運用の高度化に加え、ダイナミックマップを利用したリアルタイムでの道路情報なども取り入れていく方針。一方で「サーバーの数はまだ足りない」(同社の5G担当者)と、ハード面での不安は残っており、今後の課題だという。

[危険性高い車両に無線優先割り当て] 5Gを前面に押し出したブースを構えていたのはNEC。「今は自動車関連の収益はわずかだが、5G技術でアプローチしていく」(担当者)と強気の姿勢だ。同社は今年2月、歩行者や後続車両の接近など事故の危険性が高い車両に無線リソースを優先的に割り当て、安全制御を遅延なく行う実証実験を行った。5Gになれば車両同士の通信も可能になる見込みで、まずは交差点でのトラブル回避を第一段階の目標として取り組んでいく。

[世界初の車載向けハードウエア発表] 中国の華為技術(ファーウェイ)は今年4月、情報通信技術(ICT)でOEMメーカーとの協業を加速させる方針を打ち出した。車内や車両間の通信ネットワークを手がける。自動運転の分野では、LiDARやセンサー類も投入する。5G関連では、世界初となる自動車向けの5G通信ハードウエアを今春に発表した。今年の後半から納入を開始する予定だ。自動車専門のユニットも立ち上げており「(5G事業は)このユニットが中心になって最初は中国、その後日本を含むアジアへと広げていく」(同社の5G担当者)。
「5G時代にはこれまで蓄えてきたノウハウを生かせる」(NEC)、「ICTの分野ではわれわれの存在感は強い」(ファーウェイ)と、各社とも既存のデバイス事業での技術力が生きてくると見ている。「コンシューマー(一般消費者)向けの製品では、『4Gで良い』と言われることも少なくない」(富士通)と、従来のビジネス市場には限りがあると感じている側面もある。ハードとシステムの両面からアプローチが必要な5Gは、通信機器メーカーの得意とするところ。独自の強みを武器に、自動車市場でどう存在感を出していくのか注目が集まりそうだ。

日刊自動車新聞6月17日掲載

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