静岡県の島田市立島田市民病院の医師や看護師らが、ボランティアの災害救援バイク隊「PMAライダース」を結成した。救急車がたどり着けない災害現場に、医師らが直接バイクで駆けつけて、医療活動を行う。活動の趣旨を広め、バイクに乗る全国の医療従事者に呼びかけている。

静岡県島田市の市立島田市民病院・整形外科主任部長の中山威知郎（なかやまいちろう）さん(57歳)が代表を務める「PMAライダース」(Professional Medical Assistance Riders)。ボランティアによる災害救援バイク隊だ。

PMAライダーズは、2017年9月に結成。同病院の関係者以外にも、埼玉、三重、京都など県外からも参加者があり、医師9人、看護師22人、薬剤師1人、事務職1人の33人で組織されている。メンバーは二輪免許を所持しており、救急車がたどり着けない場所にもバイクの機動力を活かして入っていき、医療活動を行うことを想定している。

【静岡空港近くの遊休地(県有地)を使って行われたPMAライダーズの訓練をレポート】

訓練現場には、地元の二輪車販売店の協力でオフロードバイクを3台用意したほか、島田市民病院から救急車(予備車両)を1台借り出した。不整地を走行する救急車に同乗するとかなり揺れが激しい。立往生する危険があり、結局、奥への侵入をあきらめた。

傷病者役の女性は、そこからさらに離れた地点に倒れている。救急車が進めないため、隊員4人がオフロードバイク2台に分乗して救助に向かう。途中、崩れた土手がバイクの行くてを阻むがなんとか乗り越え、傷病者のもとに到着。「大丈夫ですか！」と看護師が声をかけ、呼吸の有無など反応を確認。医師が状況を判断し携行してきた折り畳み式担架で傷病者を救急車まで搬送するよう指示を出した。

搬送を終えたメンバーが感想を話す。「バイクを手押しして土手を乗り越えるのは簡単そうに見えましたが、実際にやってみると思ったより重くてコントロールが難しいんです。前の人は支えるだけにして、押し力は後ろの人に任せた方がすんなりいくようです。災害現場には何が起こるかわからないのでこういう経験の蓄積が大事です。いろいろな状況を想定して試しておきたい」とのこと。現場感覚を養うかっこうの訓練となった。

代表の中山さん（全日本モトクロスライダー、57歳）は、「私たちは現在のところボランティア組織なので、発災直後のきんきゅ活動を行うことはできないでしょう。行政機関が動き始めて、例えば消防から要請を受けて、救急隊と連携した救助・救援を行うなど医療従事者としての専門性を生かした活動を想定しています。重篤な傷病者がいるという連絡が入った場合、医師自身がバイクで現場に向かえば時間を無駄にせず、迅速な対応や踏み込んだ医療処置が可能になります。災害発生から2週間程度はそうした医療ニーズにが高いだろうと思います」と話す。

中山さんは東日本大震災の際に、現場を支援する医師として宮城県内内の病院に詰めて働いた。「自然災害は一瞬にして多くの命や財産を奪います。その惨状を前にしたとき私に何ができるか。バイクが好きでその有用性を知っています。医師としてのノウハウとバイクの機動性を合わせてそれを活かしたいと思うのです」という。

薬剤師の菅沼博茂さん(バイクの整備や溶接の資格を持つ・54歳)は、「被災地では医薬品の輸送が欠かせません。医薬品輸送やメカニックとしても役に立ちたい。バイクのカスタムが趣味なので、ゆくゆくは災害救援にふさわしいスタイルと機能を持ったバイクを独自に制作したい。そういう楽しみも持ちながら活動を続けて、この訓練場も若い人たちがのびのびバイクを楽しめるように整備していければ嬉しい」と話す。

看護師の八木和夫さん(31歳)は、「バイクは休日のリフレッシュになっている。病院中心で多くの時間を費やすので病院以外の社会とのかかわりが欲しくこの活動に参加しました。普段使っているバイクが被災現場で役立つとは考えたことがなかったので、どんなふうに使えるか興味がありました。訓練に参加してんだんイメージが湧いてきたところです」と話す。

問合せ先　PMAライダース　広報担当：菅沼さん　e-mail:kyokushin0715shimada@nifty.com

日本自動車工業会モーターサイクルインフォメーションMI　5月号掲載

 

開催日	2019年4月7日
カテゴリー	白書・意見書・刊行物
主催者	PMAライダース
開催地	静岡空港近くの県有地（静岡県牧之原市）
対象者	中高生,大学・専門学校,一般,自動車業界
リンクサイト	PMAライダース　facebook https://www.facebook.com/Shizuoka-Professional-Medical-Assistance-Riders-246681652410019/