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自動車産業インフォメーション

2019年4月22日

行き場なし積み上がる廃車ガラ “海外依存”厳しく

中国などの廃棄物輸入規制に端を発する、国内の使用済み自動車の最終処分の影響が一段と色濃くなっている。破砕業者には、これまで海外で処理されてきた自動車以外の産業廃棄物が集積されており、自動車リサイクル事業者が使用済み車から有用な素材を回収した廃車ガラについて、破砕業者が引き取りできない状況が各地で起きている。これにより、解体事業者の敷地には廃車ガラが積み上がり、リサイクル業務に支障をきたしている状況だ。国内の自動車リサイクルは、抜本的な体制の再構築が急務となっている。

 

◆どう対処したら…
3月上旬、中部地区の自動車解体事業者の敷地は、多くの使用済み車で埋め尽くされていた。普段は使用済み車を置くことがない構内の自動車通路や来客者用駐車場にも保管されており、新車販売が好調だったことを背景に「使用済み車の引き取り依頼が増えた」(中部地区の自動車解体事業者)という。工場内には、破砕業者が引き取りできない廃車ガラや使用済み車から取り外した素材となる部品が積み上がっている。引き取りしてもらえない状況や処分費用の上昇を受けて「どう対応したら良いのか分からない」(同)と苦しい胸の内を明かした。
関東地区の自動車解体事業者には現在、プレスされた大量の廃車ガラが敷地に保管されている。その数は「例年の約6倍」というほどで、適正な解体処理作業に必要なトラックやフォークリフトの導線を除いた敷地に、廃車ガラを保管する状況が続く。また、自動車解体事業者の中には、敷地内に廃車ガラの置き場がなくなりつつあり、「ディーラーや整備事業者から依頼を受けた使用済み車の引き取りに対応できなくなるかもしれない」という声も聞かれる。破砕業者は、廃車ガラの置き場を確保できない状況が続いているため、引き取りが滞っているのが要因だ。導線が狭くなったことで作業効率も落ちており、解体事業者の経営環境にも影響を及ぼしている。
自動車リサイクル業界では、昨年の中国の廃棄物輸入規制と中国と同様の対応をしたアジア各国の規制、国内の「廃棄物の処理および清掃に関する法律(廃掃法)」と「特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律(バーゼル法)」の一部改正を受けて、使用済み車の国内での最終処理問題が厳しくなるという声が相次いで聞こえていた。また、新車販売台数の増加に伴い使用済み車の引取台数が増える3、4月は、さらに状況が悪化するという見方が大半を占めていた。現在の状況はリサイクル業界の予想が的中した格好で、雑品スクラップの処理などを海外に依存してきた自動車リサイクルの環境変化が大きな影響を与えている。

◆SR最終処分が影響
破砕業者が加盟する日本鉄リサイクル工業会では、現在の状況について「深刻度は日に日に増していると言わざるを得ない」と話す。自動車のシュレッダーダスト(ASR)は、自動車リサイクル法で自動車メーカーやインポーターに引き取りを義務付けている。2019年度も使用済み車から発生するASRを破砕業者が引き取りできる重量は確保したようだ。しかし、破砕業者に万が一の案件が発生してASRの引き取りが滞れば、国内の自動車リサイクルシステム自体に影響を及ぼすことになる。
破砕業者が抱える問題は、中国やアジアに輸出されていた廃家電などのシュレッダーダスト(SR)廃棄物が国内に集積していることだ。さらに、ASRやSRの処分場がひっ迫し、余力のある遠隔地へ運ぶケースが昨年以上に増えており、輸送手段のトラックの確保ができないことも、引き取りが遅れる要因となっている。
自動車リサイクル法に基づき、自動車メーカーとインポーターの計8社の委託を受けてASRの引き取りと再資源化を担うTHチームは、破砕業者とメーカー、インポーターと協力し、現状を乗り越えようとしている。THチームの業務を担う豊通リサイクルは「不測の事態だが、相談しながらお互い危機を乗り越えようとしている」とASR再資源化に支障が出ない取り組みを進める。
ASRの発生量を抑制するには、自動車から発生する鉄、非鉄金属、プラスチックやガラスなどのリサイクルシステムを構築し、資源を国内循環する必要がある。しかし、現状ではコストや運搬など課題が残り、実現には時間がかかりそうだ。

日刊自動車新聞4月18日掲載

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
主催者

日刊自動車新聞社調査

対象者 自動車業界