会員向けクルマ
biz

INFORMATIONクルマの情報館

自動車産業インフォメーション

2019年3月29日

廃止した路線バスを復活、高齢化で潜在需要 茨城交通、福島交通

路線バスが姿を消した地域に再びバスが戻ってきた。

みちのりホールディングス傘下の茨城交通(水戸市、任田正史社長)と福島交通(福島市、武藤泰典社長)は、茨城県東海村、福島県福島市で長い時間を経て再開。利用も順調に推移し、隠れていた需要を掘り起こす。

なぜ復活は可能だったのか。両社は共に、廃止直後と比べ高齢化の進展など事業環境の変化を指摘する。東海村は2006年に福祉を重視したドアツードアのデマンドタクシーが導入されたのをきっかけに、路線バスの利用が大幅に減少。段階的に廃止され、村内路線は10年に2路線まで減少する。しかし、デマンド需給のひっ迫や、村外への移動および県外からのビジネス・観光客の移動手段確保が課題となり、路線バス復活を検討。運行する茨城交通と協議のうえ15年に実証実験を開始。利用率の高い4路線が翌年本運行になった。

利用は順調に伸びる。本運行初年度の4万8179人から、18年度は2月まで7万2602人に達する。村内にある原子力関係施設の通勤利用も後押しする。再開した路線バスは村が補助金を出すが当初予算より負担は軽い。茨城交通の任田社長は「高齢化が進み潜在需要が出てきた。デマンドではカバーしきれない需要があった。バスの必要性が見直されている」と語る。東海村企画経営課は「事業者が始めると簡単にやめられない」と行政が行うことで小回りが利く利点を挙げる。「住民全員が年2回乗れば7万人以上の利用が生まれる。それが10年後の路線存続に繋がる」と話す。

福島交通が福島市で運行する森合団地線でも実証実験を経て2018年から再開した。利用の減少により06年に廃止した路線は、地元の要請と市の交通不便地域の解消を理由に復活した。福島交通の武藤社長は「廃止から時間が経過し高齢化率の上昇など地域の環境が変わった」と話す。停留所の乗降データなどを利用し需要の見える化も行う。森合団地線沿線は人が多く住むのに路線がない象徴的な場所だったと話す。再開後の利用状況は順調で「うまく育てていけば収支が見込める可能性もある」と期待を込める。

東京交通新聞3月25日掲載

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
主催者

茨城交通、福島交通

開催地 茨城県、福島県
対象者 自動車業界