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2019年3月29日

自動車技術会が「AIチャレンジ」 IT系の学生を発掘へ

自動運転を実現するために必要不可欠となるソフトウエア、人工知能(AI)のエンジニア。しかし、「正直、自動車業界にはIT人材を教育してきた経験がない」(坂本秀行自動車技術会会長)ため、「今は発掘していかなければならない段階にある」(葛巻清吾自動車技術会総務担当理事)のが現状だ。こうした中、自技会ではIT系の学生と自動車業界を結びつける新たな取り組みを開始した。

◆自動運転の難しさを改めて認識
23、24日、自技会が東京大学柏キャンパスで開催した「ジャパンオートモーティブAIチャレンジ」は、IT技術を車に実装し、その完成度を競い合う大会だ。自技会が学生向けに実施しているイベントには「学生フォーミュラ」などがあるが、IT関連の取り組みは今回が初めて。
経済産業省が先に実施した画像認識の精度を競う大会で優秀な成績を残したIT系の学生がティアフォー(武田一哉社長、名古屋市中村区)のオープンソースソフト「オートウェア」をベースに自動運転システムを設計。自動運転用にセンサーなどを搭載したヤマハ発動機のゴルフカートを使用し、現実環境でその精度を競った。
結果的には自動運転の難しさを改めて感じさせる大会となった。当初は信号や歩行者などを検知してコースの完走を目指す「シナリオ完走部門」を初日、停車の精度を競う「制御精度部門」を2日目に実施する予定だった。だが、初日に完走するチームが現れなかったため、シナリオ完走部門は2日目まで続いた。参加した学生は「実車となると難しさがまったく異なってくる」と口を揃え、失敗とプログラミングの修正を繰り返した。

◆信号の色の認識には特に苦戦
特に苦戦したのが信号の認識だ。自動運転車は画像認識で信号の赤色を検知した上で、ブレーキを制御する。その後、青色に変わったことを検知し、発進する。そもそも色の認識も難易度が高いものの、認識した後に走行制御が機能しないミスも多かった。大会委員長を務めた葛巻氏は「ITと自動車の技術、それらを統合する技術があって初めて自動運転は実現する」と指摘する。いずれの部門も東京大学大学院情報理工学系研究科の3人で構成する「MTLLAB」(エムティーエルラボ)が優勝した。
初開催のため、運営側、参加者ともに試行錯誤の中での開催となったが、「リアルな世界に実装する面白さと難しさを感じられた」(MTLLAB)とIT系の若者との接点づくりに効果はあった。自技会は今後、競技内容やギャラリー向けの見せ方などを改善し、来年以降も同大会を継続する方針だ。

日刊自動車新聞3月26日掲載

開催日 2019年3月24日
カテゴリー 白書・意見書・刊行物
主催者

自動車技術会

対象者 大学・専門学校,自動車業界
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