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2019年3月25日

板金塗装業界、調色の自動化進む 人材不足に悩む業者、業務支援ツールに

自動車の補修作業などで、塗料の自動調色システムの活用が進んでいる。個々の車両によって微妙に異なる経年変化したボディーカラーの色味をセンサーで分析、再現するもの。補修の出来栄えを大きく左右する調色の自動化によって、熟練者以外でも一定水準の仕上げが可能になる。人材不足で悩む板金塗装業者の業務支援ツールとして、導入事例が増えつつある。ただ、調色は芸術家並みの色彩センスとこだわりが必要といわれる非常にセンシティブな作業。自動調色では「熟練者の納得する色味は出ない」という塗装業者の声もある。塗料メーカーはこうした点を踏まえながら自社のシステムの特徴と活用術を提案し、導入拡大を目指していく。

アクゾノーベルコーティングは、自動調色導入の前段階として、まず座学によって調色に関する正しい知識を習得してもらうことが重要だと考える。このため、塗装した自動車の模型をケースの中に置き、自然光を再現した光を当てて調色による見映えの変化を目視してもらうように工夫した。例えば、グレーの塗料に少しでも赤味を混ぜると、昼間は元のグレーと同じ色に見えても、夕日によって色味に違いが表れ、品質の低い補修になってしまうことがあるためだ。
同社テクニカルサービスマネージャーの市川敏弘氏は、調色について「コンピューター調色への関心が高まっているが、測色カメラとの相性もあるので完全にシステムのみで調色するのは難しい」という。デジタル技術を利用して詳細に色味を分析してデータ化し、そのデータを使って塗料を調色しても、現状の技術では人間の感性にマッチする微妙な色味を再現できないということだ。芸術的な領域に達するレベルの色表現を、システムに求めることがまだ困難である状況が示される。
ただ、調色システムの特性と有効性を理解する顧客が着実に増えているので、コンピューター調色を紹介する座学コース新設を検討する予定だ。
ロックペイントは、調色機を調色作業の補助ツールと見ている。車両塗料事業部・高野弘行副事業部長は「コンピューター調色ではデータベースの中から近い色をすぐに探せるので、省力化や時間短縮の観点から導入する経営者は多い。ただ、機械は万全ではない。調色の知識をきちんと身につけた人が使うことで、本来の機能を発揮できる」と考える。まだ万全ではないものの、手間のかかる塗装作業の効率化では高い能力を有するようになったと技術進化に手ごたえを感じている。同社はさらなる進化に取り組みつつ、顧客向けのコンピューター調色研修を検討して、塗装現場への導入を促していく考えだ。
その一方、日本ペイントは、現段階ではコンピューター調色をメインに据えた研修を考えていない。技術本部AR塗料技術部では「調色機を紹介できるが、それを目的にはしていない。色調を最終調整する場合、基礎的な調色知識が必要なので、まずは現場スタッフのスキルアップを支援したい」と考える。塗装初心者は色の見方や合わせ方もわからない場合も多く、その状態で調色機を使っても十分には効果を引き出せない。システムのメリットは理解しつつも、当面は人手による調色を基本に研修することが、塗装業者の支援につながるとした。
塗料各社の自動調色システムに対するスタンスには現在、違いがみられる。しかし、人手不足や熟練者の後継育成などの手間を考えると、システム導入を希望する塗装業者の増加が確実な情勢。業者の期待を幅広く受け止めるため、塗料各社が技術の熟成を競うことになる。

日刊自動車新聞3月22日掲載

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