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2019年3月19日

「スーパーGT GT500 グローバル化へ」自動車技術会主催で講演 モータースポーツ文化を醸成

「スーパーGT GT500 グローバル化への展望~CLASS(クラス1)共通規則の採用~」と題した講演が、自動車技術会が主催するモータースポーツシンポジウムで行われた。講師はGTアソシエイション(GTA)の坂東正明社長とニッサン・モータースポーツ・インターナショナル(ニスモ)の坂本昌平氏。日独それぞれで人気を集める競技のスーパーGTと独DTMが導入を進める共通技術規則「クラス1」について、これまでの導入経緯や技術解説、今後の展開などを紹介した。

クラス1はスーパーGTとDTMの共通技術規則。スーパーGTを運営するGTAとDTMの統括団体であるITR(ゲルハルト・ベルガー会長)が協議を続け、2018年6月に完成した。
最初に登壇した坂東社長は2009年に行ったITRとの会合や13年7月に日本で開催した第1回ステアリングコミッティ(関係者が集まった国際会議)などを回顧。その上で、「クラス1は今までにない画期的なレースのあり方になる。地域性を残しながらも根本的な車両規則は同じ。最終的にジョイントイベントとして交流戦を開催しようと取り組んできた」ことを紹介した。
クラス1で考慮したのは「安全性の確保とコスト低減」だという。安全性についてはFIAの安全規定に準拠。コスト低減については共通部品の設定を進めてきた。ただ、共通部品は「ほとんどが欧州から購入している」のが実情。日本には同等以上の技術があり、部品自体は作れるものの「コストが高く時間もかかってしまう」と指摘する。
GTAがクラス1の導入を進める背景の1つに、「モータースポーツという特殊部門において、低コストでモノ作りが可能になる環境作りを日本で進めないといけない」との危機感がある。

日本において、自動車メーカーや部品メーカー、スーパーGTの関与する様々な企業がビジネスとして成立するモータースポーツ産業を生み出し、将来的にモータースポーツ文化を醸成するためにも、坂東社長は「若い技術者、企業も一緒になって作っていきたい。そこを目的にして活動しなければならない」と語った。
ニスモの坂本氏は14~18年シーズンの共通規則に盛り込まれた各種技術について解説した。スーパーGTではクラス1規則の統一に先立ち、14年シーズンから一部を共通化した新たな技術規則を採用している。エンジンやタイヤなどの違いはあるものの、「競う領域と競わない領域を明確化した」(坂本氏)のが特徴だ。
例えばエアロなどファンの目に触れる部分は競争領域として開発に自由度を持たせる一方、あまり目に触れない部分で開発コストの高騰が懸念され、安全性に係わり性能競争の意味合いが低い部品は非競争領域として共通部品を採用した。
新たな技術規則を導入した14年以降、とくに開発が進んだのが空力性能だった。「15年時点で、サーキットの安全設備の限界を超えるレベルまで速くなった」。その結果、16年には空力開発を凍結。17年には空力規則を一部改訂しダウンフォースを25%削減した。
ただ、凍結していた空力開発が再開されたことや姿勢制御やセットアップが進むことでダウンフォースは回復傾向にあるという。
これまでスーパーGTとDTMで決定的に違ったのがエンジンだ。DTMが4リットルV8自然吸気エンジンを採用するのに対し、スーパーGTは「ダウンサイジング、熱効率の向上、軽量化など、環境技術を市販車に展開できるように2リットル直噴ターボエンジンを採用した」。
この2リットル直噴ターボエンジンはクラス1規則で採用されることになっており、クラス1規則を完全導入するDTMは今シーズンから同エンジンを搭載してレースが行われることになる。
スーパーGTでは20年シーズンからクラス1規則に準拠したマシンが登場する。ただ、レースフォーマットやイベント訴求点の違いを考慮し、エアロやエンジンの一部、タイヤ開発の係わる部分など、必要最小限の変更を加えた「クラス1+α規則」として導入する計画だ。
坂本氏は「エアロバランスの確保、重量配分をリアに寄せたクルマづくり、エンジンでは今まで以上に熱効率の向上とドライバビリティの向上が必要になる」とクラス1+α規則におけるマシン開発の方向性を紹介した。

日刊自動車新聞3月15日掲載

カテゴリー 展示会・講演会
主催者

自動車技術会

対象者 大学・専門学校,一般,自動車業界