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2019年2月16日

エーミングとキャリブレーション認定率、地方部で低調 大手損保調査、安全確保に危機感

先進安全技術のエーミング(機能調整)とキャリブレーション(初期化)について、実施状況に地域差が存在する実態が明らかになった。

大手損害保険会社が両作業の認定率(整備工場からの見積もり申請を認めた割合)を調査したところ、北海道や東北、九州では首都圏に比べ相対的に低かった。エーミングでは首都圏が8割超に達したのに対し、東北は5割程度にとどまる。工場別調査ではディーラーの認定率が6~7割に低迷することもわかった。調査を手がけた損保の担当者は「基本的に申請があればすべて認定している。車両安全を確保するためにも確実に実施してほしい」と話す。

調査期間は2018年7~12月の半年間。エーミングの認定率は全国で55%強だった。地域別で高かったのが埼玉や千葉、神奈川などの首都圏でおおむね7~8割が認定を受けた。一方、中四国や九州は5割強、静岡など中部は3~4割にとどまった。
キャリブレーションの認定率は全国で約7割。首都圏はエーミングと同様に7~8割の水準、近畿圏も同程度だった一方で、北海道は3割弱にとどまった。

工場別では、エーミングの認定率がディーラーで約6割、ディーラー以外が5割強だった。キャリブレーションはディーラーが7割強、ディーラー以外は6割弱という結果だった。
地域差の背景には、市場規模の大きい都市部で対象車の入庫が多く、結果として整備事業者の意識や技術レベルに差が生まれている可能性がある。
ただ、担当者は「ディーラーの認定率が高くない(申請が少ない)状況を危惧している。本来は100%でないといけない」と指摘する。

■専用機器導入や少ない入庫、作業上の課題も
先進安全技術が普及期を迎え、エーミングやキャリブレーションに対する整備事業者の意識は着実に高まっている。ただ、専用機器が必要だったり、対象車種の入庫が少ないなど、作業を行う上の課題が少なくないのも実情だ。
エーミングやキャリブレーションは、カメラやミリ波レーダー、レーザーレーダーといった先進安全技術に使われる検知デバイスを整備後に調整、初期化する作業。衝突被害軽減ブレーキなどの普及によって、メーカー系ディーラーはもちろん、一般整備工場、ガラス事業者なども対応を迫られる。
ただ、作業を行うにはスキャンツール(外部故障診断機)、「ターゲット」と呼ばれる専用ツール、一定の作業スペースが必要になるため、ディーラーでも全ての拠点で実施されているわけではないのが実情だ。地方部では「作業を行わなければならないクルマの入庫がない」「やり方がわからない」などといった声も依然として多く、整備業界でも実施状況に温度差があると見るのが一般的。こうした状況が、今回の調査結果に表れたとも言える。
損保の担当者は「整備事業者の申請漏れや忘れ、作業が必要かどうかの判断が付いていないケースがあるかもしれない。ただ、安全性の維持に直結する作業だけに、確実に実施してほしい」と話す。
こうした作業は早晩、自動車検査(車検)でも必要になる。2024年(輸入車は25年)から始まる車載式故障診断装置(OBD)車検では、作業未実施車は不合格となることが決まっているからだ。
エーミングができないために車検を引き受けられなかったり、作業を外注して生産性が低下すれば経営にも響く。新技術を搭載した車両が増えていく中、整備事業者は今まで以上の危機感を持つ必要がありそうだ。

日刊自動車新聞2月13日掲載

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