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2019年1月23日

デトロイトショー、「大きな車」やスポーツ車に存在感 クルマを操る楽しさ発信

「2019北米国際自動車ショー(NAIAS)」が米デトロイトで開幕した。米国勢を中心に多くの自動車メーカーがSUVやピックアップトラックを多数出展。日系勢を含め、スポーツ車の発表も相次いだ。その一方で、電気自動車(EV)の姿は少なく、米国ではEVに対する注目度やニーズの低い様子が浮かび上がった。

同ショーは、かつては年頭に“この1年”の自動車業界の流れを示す場として世界的に注目を集めてきた。しかし、このところはその役割を同時期に開催されるエレクトロニクス技術の見本市「CES」に奪われたという声があがり、存在感が薄れた。
こうした状況ではあるが、年販1700万台超の世界第2位の新車市場である米国での拡販に向けて、各社が活発に新型車を公開した。
その目玉は、まず現地の新車販売で7割近くを占める主力車種となったライトトラック(SUVとピックアップトラック)だ。フォード・モーターは新型SUV「エクスプローラー」、ゼネラル・モーターズ(GM)は「キャデラックXT6」、FCA(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)は、“ラム”ブランドの「ヘビーデューティー」を発表した。
ラムの開発担当者は「自動車メーカーは大きな車を披露するためにデトロイトに来る」と断言。排気量の大きいエンジンなど米国車の伝統的なクルマづくりの人気が根強い様子が改めて示された。
新型スポーツ車の発表が相次いだことにも“走り”という伝統的な車の魅力がユーザーに重視されていることが浮かび上がる。トヨタ自動車の豊田章男社長は「SUVもいいが、後輪駆動のスポーツカーに勝るものはない」と述べ「スープラ」の復活を宣言した。さらに同社はスポーティークーペ「レクサスRCF」も発表。トヨタモーターノースアメリカのジム・レンツ最高経営責任者は「(セダンなどの)乗用車の市場は底堅い」とSUV以外にも継続的に力を入れる方針を示した。
スバルテクニカインターナショナル(STI)もコンプリートカーの最高峰「Sシリーズ」初の米国専用車「S209」を発表した。平川良夫社長は「SUVラインアップはほぼ出そろった。走る楽しさというスバルらしさの訴求に打って出る」と話す。
フォードも「マスタング・シェルビーGT500」を発表。自動運転技術の発表であふれた「CES」に対し、モーターショーならではのクルマを操る楽しさを発信する企業が目立った。
その一方で、フォルクス・ワーゲン(VW)は会場で約8億ドルを投じ北米で22年から電気自動車を生産すると発表。さらにVWは米フォードと国際的な包括提携に正式合意した。米国との関係を密にして「貿易摩擦の緩和にもつなげたい」(ヘルベルト・ディースCEO)考えだ。
また、広州汽車(GACモーター)のユー・ジュン社長は、19年末に北米投入を予定していた新型車の発売を20年に延期すると表明。緊迫する米中関係がモーターショーに影を落とした。
米国勢、日系勢が活発に新型車を公開したNAIASではあるが、今回はフォルクス・ワーゲンを除く独勢が一斉に出展を見送り盛り上がりに欠けた。さらに、来年からは開催を従来の1月から6月に変更する。主催者は、氷点下10度以下になるデトロイトの気候を理由に挙げるものの、「CES」に出展社、メディアを含む来場者が流れていることが見直しの理由であることは明らかだ。
ただ、今回のショーでも、米国自動車市場を映し出す“鏡”としての役割には変わりがなかった。開催時期の変更を機に、老舗自動車ショーとしての存在感を改めて示していくことが期待される。

日刊自動車新聞1月21日掲載

カテゴリー 展示会・講演会
主催者

2019北米国際自動車ショー(NAIAS)

開催地 デトロイト(米国)
対象者 自動車業界