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2019年1月11日

19年は正念場の年に 自動車メーカートップの声

堅調な成長を続けてきた世界経済だが、2019年は正念場の年となりそうだ。米中貿易戦争の行方や英国の欧州連合(EU)離脱、消費増税など内外で多数の懸念材料が偏在し、視界は晴れない。自動車産業では100年に一度の大変革期を迎える中、「CASE(コネクテッド・自動運転・シェアリング・電動化)」をテーマに、IT(情報技術)業界など新たなライバルと技術革新を競うことに迫られている。7日に都内で行われた自動車工業団体の新春賀詞交歓会で、メーカー各社トップらに今年の最重点テーマと主要市場の見通しを聞いた。

◆トヨタ自動車 豊田章男社長(日本自動車工業会会長)
これまで海外の進出先でホームタウンやホームカントリーと言ってきたが、今後はホームプラネットという感覚で環境やエネルギー、サプライチェーンなどを包括的に考えてやっていきたい。
天気予報はくもり。各社が努力して雲を取り払う感じだ。ただ、アマゾン、フェイスブックなど(の合計時価総額)がドイツの国内総生産より高いとか、アリババの時価総額がトヨタの3倍とか、ああいうのが是正される局面を迎えると思う。そうなると逆に、自動車などリアルな産業がどう評価されるか正念場になる。AI(人工知能)があってもリアルがないと成り立たないから。

◆ホンダ 八郷隆弘社長
ホンダは昨年70周年を迎えた。昭和の40年と平成の30年を生きてきて、今年はその次のステップとして、今までの仕事のやり方とか地域の考え方を進化させていきたいと考えている。「SEDB」の各部門を超えて、いろんなことにチャレンジしたい。市場の見通しは、国内は消費増税もあるが堅調に推移するだろう。主力の北米と中国については厳しい局面にあると見ている。中国は新しいビジネスにチャレンジする年となる。

◆ダイハツ工業 奥平総一郎社長
今年は全社をあげて進めている「DNGA」開発車の第一弾投入に向けた重要な1年。プラットフォームの新開発は新しい商品展開の土台づくりで、ずっと培ってきた品質に対するお客様からの信頼を崩さないようにしっかりと取り組んでいくことが一番大きなテーマだ。全力投球でいく。米中の通商問題などを背景に先行きが見え難いところはあるが、ASEANは今後も伸びていく市場。しっかりと力を入れていく。

◆スズキ 鈴木俊宏社長
今年の最重要テーマは基礎・土台づくり。今後インドで年販500万台、グローバルで700万台を目指すにあたって、社内の各部門がそれに対応するだけの体制がまだ整っていない。既存の組織の土台をしっかりとつくり上げる必要がある。主要市場の景気見通しは最近の急な円高を一つとっても予測できない。世の中の動きは見通せない。

◆マツダ 丸本明社長
今年はマツダにとって「新世代商品元年」だ。スカイアクティブ技術と深化した魂動デザインで開発された新世代商品と、人と人とのつながりを重視した誠実な「顧客体験」を通じて、マツダ車を保有する価値をお客様に感じていただき、お客様と世界一強い絆で結ばれたブランドになることを目指す。足元で多少の需要変動があったとしても、各市場でマツダが目指すブランド価値経営を追求する。

◆スバル 中村知美社長
最重要テーマは一連の完成検査問題のような不適切事案を今後は絶対に起こさないことと、お客様、取引先、社会などからの信頼回復である。主要市場の景気見通しは非常に不透明だ。国内は消費増税、米国は金利動向がポイントになってくるだろう。

◆三菱自動車 池谷光司副社長
今年は中期経営計画の最終年度であり非常に重要な年。新型車「エクスパンダーが非常に好調でアセアンなどを中心に堅調に推移している。外部環境に不透明感が出ている中、従来以上にコスト面なども意識しつつ、中計の達成に向けて全力で取り組む。景気天気は薄曇り。19年の世界経済は足元でやや減速感が出ているうえ、貿易摩擦など不確定要素もあり楽観はできない。当社が得意とするアセアンなどは堅調な推移が見込まれ、全体として過度に悲観すべき状況ではないと思う。

◆いすゞ自動車 片山正則社長
中期経営計画では方向性を決めたが、それをどうやって実現するかという具体策へと移していきたい。どれくらいのリソースを投入して、具体的にいつまでにやるかを明確にする。主要市場の景気見通しについてはあまり悲観的に考えていない。天気で言えば晴れ時々曇り。株価や為替の変動もあるが、日本を含めて世界の動きも結局落ち着くとこに落ち着くと思う。

◆日野自動車 下義生社長
今年は「経営戦略2025」に向けた1年目となる。今年から来年にかけては為替リスクなど不確実な要素も多いが、だからこそ売上や台数に踊らされず、一台当たりの収益力を高めるための原価低減を足元でしっかりマネジメントしていきたい。ドライバー不足などトラック業界は多くの課題を抱えているが、社会インフラを支える会社として、こうした課題を解決していくことが最大のミッションだと考える。

◆三菱ふそうトラック・バス 松永和夫会長
経済全体が曲がり角なことに加え、輸送業界の人材不足も課題になってきている。我々トラックメーカーとしては、燃費性能や安全性能を高めたクルマを提供することで、市場の期待に応えていくしかない。我々の今年のテーマは「CASEの時代をリードする」だ。コネクテッドや自動運転に関わる技術力を更に高め、ドライバーの能力に依存していたところをカバーできるクルマづくりに取り組む。景気天気は曇り時々晴れ。

◆UDトラックス 酒巻孝光社長
今年から自動運転レベル4の実証実験を開始するなど将来を見据えた施策に挑戦する1年になる。一方で、これらが収益面に出てくるのはもっと先のため、今の市場に合った車両の提供も重要だ。今と未来それぞれのニーズに合ったクルマを開発していく。景気天気は曇りのち晴れ。今年のトラック市場全体は昨年と同水準で推移するだろう。東京オリンピック・パラリンピックの需要もほぼ落ち着いた。消費増税の影響は多少はあるものの過去の増税時と比べれば影響は少ないだろう。

日刊自動車新聞1月9日掲載

開催日 2019年1月9日
カテゴリー 白書・意見書・刊行物
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