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2018年11月14日

活躍する外国人整備士、日本人にも良い刺激

外国人整備士は日本の整備現場ですでに活躍し始めている。中古車大手のケーユーホールディングスでは約30人の外国人整備士が働く。UDトラックスも今春から約60人の外国人実習生を国内販社に配属させた。技術を学んで母国で起業するなど目的意識が明確な外国人労働者に「現場が活性化され、日本人メカニックも良い刺激が受けられる」(UDトラックス)との期待もある。一方で語学力不足や文化の違いなどに留意する必要もあるという。

■現場の風通しもアップ
2010年から外国人の採用を始めたケーユーは今春も新卒で3人を採用した。入社試験は日本語能力をのぞき日本人と同じ基準で行う。入社後の給与や評価、福利厚生なども日本人と同じだ。ただ、生活や文化の違いもあるため、頻繁に面談を行い、私生活や仕事上の悩みを聞き出して解消に努めている。井上恵博会長兼社長は「(外国人は)非常にまじめに働いてくれている」と太鼓判を押す。外国人整備士1期生として入社した中国出身の李鵬さんは整備士としての実績が評価され、永住権を取得した。
UDトラックスは今春、独自に選定した整備経験を持つインド人と、監理団体を活用して整備未経験のフィリピン人の約60人を受け入れた。同社の金丸隆宏バイスプレジデントは「実習生は20代の若者が中心で、(知識や技術を)吸収しようとする意欲が高い。コミュニケーションの幅が広がり、実習生に分かりやすく伝えようとすることで現場での風通しもより一層良くなっていくだろう」と期待を込める。
車検チェーン「ホリデー」(大阪市浪速区)は加盟店近隣の整備士養成学校を訪ね、外国人留学生の状況や就職先を聞いたり、ホリデーのPRなどを行う計画だ。松川陽一社長は「(人手が足りず)社長自(みずか)ら現場に出て作業している加盟店もあるほどだ。加盟店のニーズと留学生の就職先をマッチングする橋渡し役を担いたい」と狙いを語る。

■語学力や職場環境に配慮を
ただ、外国人労働者の採用や定着には配慮も必要だ。静岡工科自動車大学校(岡部剛校長)国際オートメカニック科の杉山良仁氏は課題として日本語の読解力を挙げ「互いに質問しあって確認することが大事だ。学生の中には理解しているかをたずねると、分かっていないのに『ハイ』と答えることがある」と話す。UDトラックスは日本人整備士向けに異文化を学ぶ講習を開いたほか、互いに相談できるよう実習生を2人ずつ配属するなどキメ細かい工夫を施す。
留学生や技能実習生を積極的に受け入れる光自動車(千葉県多古町)の大矢桂介社長は「全スタッフを集め、今後この会社が生き残っていくためには外国人スタッフの力がなくてはならないこと、仲間として接すること、差別をしてはならないこと、文化などを受け入れることなどを繰り返し話した」と当初を振り返り「良くも悪くも、教育や働き方、休みも残業も全く同じように扱うことが重要なのではないか」と指摘した。

人手不足の中で「専門的な知識と技術を持った整備業界への要請は一層強まっていく」と国土交通省自動車局の平井隆志整備課長は予想する。乗用車メーカーの幹部は「外国人を含む若手には点検や車検といったルーチンワーク、ベテランにはより高難度の修理を任せられる体制を整えたい」と語った。

日刊自動車新聞11月10日掲載

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
主催者

日刊自動車新聞社調査

開催地 ㈱ケーユーホールディングス(東京都町田市)、UDトラックス、ホリデー」(大阪市浪速区)、㈱光自動車(千葉県多古町)
対象者 中高生,大学・専門学校,一般,自動車業界