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2018年10月27日

タクシー配車アプリが活況、ライドシェアXデーに備え ノウハウ収集に力

タクシーの配車アプリ市場が活況だ。15日にディー・エヌ・エー(DeNA)が年内に東京23区内での展開に乗り出すことを発表したほか、ソニーは都内のタクシー会社7社と新会社「みんなのタクシー株式会社」を設立した。

最大手のジャパンタクシー(川鍋一朗社長、東京都千代田区)は、全国の法人タクシー車両の3分の1に当たる7万台をすでにカバーする。世界ではライドシェアの存在感が増している。日本は「白タク」として禁止されているが、タクシーサービスのあり方も変化を迫られている。

DeNAは、今年4月に「タクベル」の名称でタクシーの配車アプリ市場に参入。約5カ月で月間実車5・8万回を突破した。年内に東京23区内でも開始し、約9500台をカバーする。19年には京阪神エリアへの進出も予定しており、その後全国へ対象地域を広げる方針だ。
配車アプリ市場は競合他社がひしめく。最大手のジャパンタクシーのほか、今秋にはソフトバンクと中国のライドシェア大手・滴滴出行(ディディチューシン)が大阪府内で事業を開始。ライドシェア世界大手の米ウーバーテクノロジーズは9月に名古屋市のタクシー会社と提携し、日本市場に本格参入した。ソニーは都内のタクシー会社7社と6月に新会社を設立し、AI技術を用いたタクシーの配車サービスや需要予測などを行う。
事業者の思惑は微妙に異なるようだ。ウーバーやディディは、ライドシェアの代替サービスとして配車アプリを展開し、今から日本のデータやノウハウを収集。世界事業に活かすとともに、日本の“Xデー”に備える狙いもありそう。

タクシー会社にとってライドシェア事業者は目の敵。ただ、価格や利便性などでタクシーにない特徴を備え、国によっては利用者の圧倒的な支持を集めていることも事実だ。実際、米ニューヨークなどライドシェアが盛んな地域では、タクシーの利用者数が激減しており、廃業を余儀なくされるドライバーも少なくない。「ライバルの力を借りてでも既存ビジネスから進化しなくては生き残れない」という危機感が配車アプリ導入の背景にある。
タクシーの配車アプリでは、全国に約20万台ある法人タクシー車両をどれだけ押さえられるかがカギとなる。ライドシェアの前哨戦とも位置付けられるこのマーケットの勝者が、将来のシェアリング市場の覇権を握るといっても過言ではなさそうだ。

日刊自動車新聞10月22日掲載

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
主催者

日刊自動車新聞社調査

対象者 自動車業界