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2018年10月20日

政府機関や損保業界、EDRの活用広がる 整備業には不安感

車両挙動を記録する「EDR(イベント・データ・レコーダー)」を活用する動きが広がってきた。

事故調査を行う政府機関や損害保険業界などが相次ぎ「CDR(クラッシュデータ・リトリーバル)」の運用を始め、自動運転技術の普及をにらんだEDR義務化の検討も本格化する。こうした環境整備は進むものの、法制化をめぐっては米国などが先行する。また、データ解析によって修理責任が明確になることへの不安感も整備業界で台頭しつつある。

EDRはエアバッグの作動情報などをもとに、衝突前後車速やブレーキ操作、操舵角、衝突規模、アクセル開度などさまざまな情報を記録する装置だ。米国では2000年に米ゼネラルモーターズが初導入して以来、ボッシュ製のCDRは17メーカー52ブランドに対応しているという。

米国でEDR/CDRが普及する背景には法規制の影響がある。12年にはEDRデータを読み取るツールを提供しなければならないことが決定。15年には韓国、21年以降には欧州、中国でも類似の規制が導入される。
一方、日本では法規制がなく、トヨタ自動車など5社が対応しているにすぎない。CDR自体も昨年に発売されたばかりだが、それでも大手損保や警視庁、検察庁、弁護士業界などEDR/CDRを活用する動きは官民を問わず広がっている。

あいおいニッセイ同和損害保険は、ボッシュが認定する「CDRアナリスト」を15人育成。これまで約200件のEDRデータから事故調査を行い、保険金支払いまでの期間を短縮するなどの成果が出ているという。
国も自動運転車の普及を見据えてEDRの活用を視野に入れる。国土交通省が設置した「自動運転における損害賠償責任に関する研究会」がまず、EDRの設置と活用に関する環境整備の必要性を報告。同じく国交省による「自動運転車の安全技術ガイドライン」ではデータ記録装置の搭載を技術要件に挙げた。高速道路でシステムが運転を肩代わりする「レベル3」を念頭に、EDRの搭載や事故時の記録提出を20年にも義務付ける方向で議論が進む。

一方、整備業界に与える影響を懸念する声も広がり始めている。「EDRが普及するほど、整備事業者の修理責任が明確になってしまう」(損保関連会社幹部)ためだ。例えば、先進安全技術のエーミング(機能調整)作業を省略したことで事故が発生したとEDRデータの解析から判断されれば、整備工場の過失が問われる事態も想定される。
自動運転社会の実現に欠かせないEDR/CDRだが、同時に「先進安全技術装着車の入庫はA社、未装着はB社と、整備業界では入庫が増えるところとそうでないところが明確に分かれてくる」(同)と指摘する声もある。

日刊自動車新聞10月17日掲載

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
主催者

日刊自動車新聞社調査

対象者 自動車業界