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2018年8月2日

芝浦工大 森野博章准教授、車車間通信で渋滞緩和 運転支援手法の効果を確認

芝浦工業大学(村上雅人学長、東京都港区)は、情報通信工学科の森野博章准教授が車車間通信による「自然渋滞解消支援手法」を研究し、渋滞道路の通過所要時間を10%減少する効果があることを確認したと発表した。

自然渋滞が頻発するポイントとされるサグ(緩やかな下り坂から上り坂に変化する地点)での効果をシミュレーション。渋滞にはまった車両から最大1千メートル離れた後続車に情報を送り減速を促し、渋滞ポイントに到着する時間を遅らせる。こうしてポイントで滞る車の量を減らして交通流を円滑化し、通過所要時間の減少につなげる。自動運転車に組み込み可能な機能としても提案する。

東北自動車道矢板インターチェンジ付近で実際に測定された渋滞発生時の車両走行データを使用して、交通流の変化をシミュレーションし、効果を検証した。車車間通信の可能な車載器を搭載した車両がシミュレーション対象車両の20~40%にとどまった場合でも、渋滞ポイントの通過時間が5~10%減少することが明らかにできたという。

通信は、100メートル程度の「短距離モード」と最大1千メートルの「長距離モード」の二つを使い分け、車両間で位置と走行速度の情報をやり取りする。走行中にはまず、短距離モードで周辺車両と定期的に情報を交換。そして自車の走行速度が低下し低速走行が一定時間以上、継続するとともに、前方の車両も同様に低速で走行している場合に渋滞が始まったと判断し、その情報を長距離モードで発信する。情報を受信した後続車では、一定の速度まで減速することをドライバーに促し、渋滞ポイントに到着する時間をコントロールして渋滞緩和につなげる。

渋滞解消の研究では、渋滞に近づきつつある車両の速度を低下させて渋滞ポイントに滞る車の量を減らし交通流の緩和を図る「渋滞吸収運転」が有効な手段として議論されてきた。ただ、実際にドライバーが渋滞を吸収するように運転操作を判断することは、難しいとされていた。
森野教授は、車車間通信を活用して渋滞の発生状況をリアルタイムに通知するとともに、どれくらい減速すればよいのかを具体的に伝えることによって、ドライバーの適切な運転判断を支援する手法を具体化した。

通信にはアナログテレビで使用されていた電波で、通信距離が最大1千メートルと長く障害物に強い700メガヘルツ帯の周波数を使用する。FM多重放送など既存の交通情報メディアと比べ、情報伝播のリアルタイム性に優れるため、後続車の速度調整を適切に促せるとした。
今回の研究では、人が運転操作を行うことを前提に効果を評価した。今後は自動運転への適用や、人の運転と自動運転が混在する道路でも効果が表れることをシミュレーションで確認するほか、関連機関と連携して実証試験に取り組み、実用化を目指す。

日刊自動車新聞7月30日掲載

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
主催者

芝浦工業大学

対象者 自動車業界