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2018年7月26日

後続車無人のトラック隊列走行実用化へ一歩

後続車が無人のトラック隊列走行が実用化に一歩近づいた。3台のトラックが約10メートルの車間距離を維持しながらテストコースを隊列走行する様子が、初めて報道陣に公開された。

◆二つの技術要素
後続無人隊列走行システムは先頭車が後続車を車車間通信(V2V)を用いて、けん引する。先頭車はドライバーが手動運転するが、後続車は協調型車間距離維持支援システム(CACC)制御と車線維持制御の二つの技術要素により、先頭車を追従するようにハンドルとアクセル、ブレーキを自動制御する。

今回の実験車ではCACC制御として760メガヘルツのV2Vと車間距離を検知するミリ波レーダーを使い、約10メートル間隔での隊列走行を実現した。
先頭車がブレーキを踏んだ瞬間に減速度(G)を推定し、速度と加減速度を合わせてV2Vで後続車に送信する。後続車は先頭車の推定Gや速度に沿い、アクセルとブレーキを自動制御する仕組みだ。

CACC制御については、2台隊列走行で時速80キロメートルからのフルブレーキという条件の実験で効果が検証されている。市販のACC制御では約20メートル車間距離が短縮したのに対し、推定Gを利用したCACC制御の場合、2・6メートルで収まった。

◆CACC制御
通常は急ブレーキを踏んだ時に車間距離が20~30メートルないと衝突する可能性があるが、CACC制御により10メートルでも安全を確保できる。
今回の実験車はV2Vの時間が100ミリ秒(1ミリ秒は1千分の1秒)かかるが、2019年1月の公道実験時までに20ミリ秒に短縮する予定だ。 推定Gのリスクヘッジについて、システム開発を担当する先進モビリティ(東京都目黒区)の青木啓二社長は「これだけブレーキを踏めば、これぐらい減速するという数値を入力しており、プラスマイナス10%の誤差でも車間距離を保てる設計をしている」と安全性を強調する。
車線維持制御は冗長性を確保する観点からGPSとLiDAR(レーザーレーダー=ライダー)の二つの追従制御技術を採用した。

◆先行車と同じ座標
高精度測位が可能なRTK(リアルタイムキネマティック)―GPSによる追従制御は、先行車からV2Vで送られる走行軌跡座標に合わせて、後続車が常に先行車と同じ座標になるようにハンドルを制御する。
ライダーによる追従制御は、先行車の後端を検知し、位置のズレをハンドルで補正することで常に先行車を追う。
今回のデモでは最初はGPSを使って追従したが、受信感度の悪いエリアに差しかかると自動的にライダーに切り替わり、そこを抜けると再びGPSに戻った。

◆来年1月公道実験
センサーは雪や濃霧など悪天候時の検知が懸念されるが、「GPSは事前の実験で天候の影響を受けにくいことを確認した。ただ、トンネルや橋りょうの下を通る時は使用できないためライダーで対応する。一方、ライダーは悪天候時には、あらかじめ想定速度を下げるなど走行条件を変えることでリスクヘッジを図る」(青木社長)構えだ。
19年1月に予定する公道実験では、今回よりも信頼性と安全性を高めたシステムの構成を検討している。V2Vでは760メガヘルツに加え、携帯電話で使われる4G LTEと光車車間通信の三重化を図る。車線維持制御は今回と同じだが、車線変更や合流の際に先頭車のドライバーの負担を軽減する安全運転支援をインフラ協調型で行う予定だ。

政府は「未来投資戦略2018」の中で後続無人隊列走行の実用化を掲げる。公道実験後は20年度に高速道路(新東名)で実現し、22年度以降に高速道路(東京~大阪間)での事業化を目指している。

日刊自動車新聞7月23日掲載

カテゴリー 会議・審議会・委員会
主催者

国土交通省

対象者 自動車業界