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2018年6月21日

国総研、交通ビッグデータ研究 自動運転にも応用可能

国土技術政策総合研究所(国総研)は、交通ビッグデータの活用に関する研究成果の報告会をこのほど開いた。携帯電話の位置情報などを基に人の移動や潜在的な交通需要などを把握する。移動ニーズと採算性を両立するバス運行路線の割り出しや、自動運転サービスの事業化調査(FS)に応用できるという。

 

国総研と東京大学、NTTドコモが2014年度から17年度まで研究した。NTTドコモは5年前から基地局が捉えたデータを使い、いつ、どこに、何人いたかを24時間365日分析する「モバイル空間統計」を運用し、防災や観光分野に役立ててきた。ただ、人の流動そのものを捉えたり、移動手段を把握する上で課題があった。

3者で開発した手法は、あるエリアからほかのエリアに移動する人数を把握するため、出発エリア(Origin)から到着エリア(Destination)までを追ったOD調査の手法を応用。性別や年齢情報を加えた上でプライバシー保護のために個人識別性を除去し、携帯電話の普及率を加味して移動状態を把握できるようにした。一定時間内に1キロメートル以上動いた場合を「移動」と見なし、移動距離も把握。移動速度をもとに交通手段も推計する。一定時間動かなかった場合でも「滞留」として認識する。
この枠組みをNTTドコモの関連会社がバス事業に応用してみた。北海道旭川市で運用した結果、潜在需要(携帯の契約人数)は多いものの路線が通っていない、または運行本数が少ない地域を割り出すことができた。また、中央復建コンサルタンツは「ETC2・0」の移動情報と組み合わせ、自動車による移動をより詳細に把握することにも成功した。データの用途が広がるほか、人口流動統計などの高度化も進むとしている。

ETC2・0や車載カメラなど先進技術の導入も進みつつあるが、一日の自動車の動きを調べる「道路交通起終点調査」は現在、5年に1回しか行われない。新たな手法を使えば、道路の開通や商業施設の新設といった変化に即応できるほか、移動の潜在需要も推計できる。
国総研の関谷浩孝所長は自動運転プロジェクトにも言及し「需要に応じ『ここならレベル4』『この地域はカート型がいい』など、自動化のレベルや車種も推計できる。最適な運行ルートの設定にもつながる」と期待する。国土交通省の越智健吾都市計画調査室長も「人に関するデータと、土地利用や経済活動などのデータを連携させ、国土や地域の魅力や活力の向上につながるアウトプットが得られるのではないか」と話す。

今後、NTTドコモは来年3月にも基地局を使ったデータ提供事業を本格化させる。国総研や東京大学も研究成果を政策や事業に役立てていく考えだ。近い将来、混雑がいつの間にか解消していたり、バスの使い勝手が良くなったとしたら、それは交通ビッグデータの恩恵かも知れない。

日刊自動車新聞6月16日掲載

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
主催者

国土技術政策総合研究所(国総研)

対象者 自動車業界