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2018年5月16日

「空飛ぶクルマ」現実味、海外で着々と進む開発

「空飛ぶクルマ」が絵空事ではなくなってきた。今年3月にはオランダの新興企業パルヴィが商用モデルの発売を発表。米ウーバー・テクノロジーズなども着々と開発を進める。日本では若手ベンチャーの有志団体が開発を進める程度だが、経済産業省が開発支援に乗り出すことで、潮目が変わる可能性もある。

「空飛ぶクルマ」に明確な定義はないが、「電動」「自動」「垂直離着陸」などがキーワードだ。電動化で騒音が小さくなるだけでなく、部品点数が減って運行コストも安くなる。自動操縦技術との親和性も高く、操縦士の負荷が大幅に減りそうだ。量産が前提だが、経産省の試算では機体コストは高級車並みの1千万円から1500万円程度、運航コストは1キロメートル当たり400円前後と地上を走るタクシー並みになるという。
オランダのパルヴィが今年末にも納車を開始するモデルは、3輪の車体に折りたたみ式のローターを搭載。地上では時速160キロメートル、空中では同180キロメートルで飛行可能だという。法令的にはジャイロプレーン(回転翼航空機)扱いだ。米ウーバーが20年までの実証実験、23年の実用化を目指すと公表したモデルは、将来的には配車サービスとの組み合わせも想定する。欧州エアバスも23年に4人乗りの機体の実用化を目指す。

日本では、若手ベンチャーの有志団体「カーティベーター」が20年の東京オリンピック・パラリンピックでのお披露目を目標に開発を進めているが、具体的な事業化を前提としたプロジェクトはない。
企業からの要望を待たずに開発支援を表明したのが経産省だ。昨秋から製造産業局の航空機武器宇宙産業課が中心となり、産業機械課や総務課、自動車課も加わり事業者からのヒアリングや海外情報の収集を通じて具体案を練ってきた。3月の産業構造審議会(経産相の諮問機関)で開発方針を表明。多田明弘製造産業局長は「陸・海・空の交通がつながり、個人や物流などがシームレスに運営する時代がやってくる」と意欲を示した。まずは「カーティベーター」のほか、無人機製造のスバル、航空機事業を持つホンダなどの自動車メーカー、国内のドローンメーカーや電池・モーター企業などでコンソーシアム(企業連合)を作り、安全基準など協調領域の開発や実証費を支援する。国際動向にも目配りしつつ、関係法令の整理や論点なども議論していく。

事業化の可能性は法令や制度とも絡んで現時点では未知数だ。産業利用が進み始めたドローンでさえ、都市部や重要施設の近隣では飛行規制がかかる。人命がかかるとなるとなおさらだ。ただ、離島や中山間地、ジャングルや砂漠地帯など、世界規模で見れば「空飛ぶクルマ」を受け入れる余地はゼロではない。
経産省は「拡大するマーケットが世界なら、そこに機体やバッテリーを供給するほか、空・陸・海の移動データを一体的に集め新たなプラットフォーマーとなることも期待できる。さまざまな派生サービスも展開できる」(航空機武器宇宙産業課)と、世界市場もにらんで開発支援を進める考えだ。
日刊自動車新聞5月12日掲載

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対象者 自動車業界