会員向けクルマ
biz

INFORMATIONクルマの情報館

自動車産業インフォメーション

2018年4月23日

経産省の自動車産業新戦略、アジア市場も念頭に EV政策で中国に対抗

経済産業省が自動車産業の新たな戦略をまとめる背景には、電動化やコネクテッドなど新技術への対応に加え、東南アジア諸国連合(ASEAN)やインドなどの自動車政策を日本などの先進国とそろえ、急速に台頭する中国の自動車政策に対抗する狙いがある。

中国政府は新エネルギー車(NEV)規制を2019年から始める。米カリフォルニアなどのゼロ・エミッションビークル(ZEV)を手本にしたものだが、米国が販売台数規制なのに対し、中国は生産台数で規制する。メーカー各社が規制値に足りない分をクレジットとしてやりとりする点は同じだ。
クレジットは電気自動車(EV)などを多く手がけるメーカーが売り手、既存メーカーが買い手にまわることが多い。ZEV規制では米テスラがクレジットの売却で年間数百億円を稼ぐ。日系の買い手はトヨタ自動車やホンダなどだ。

業界内でやりとりされるクレジットは、言わば“仮想通貨”で、政府にとって財政支出を伴わず使い勝手が良い。ただ、最終的には消費者がコストを負担する。こうしたクレジット制度を伴う二酸化炭素(CO2)規制をASEANやインドなどが無秩序に導入すれば既存メーカーの負担は一気に増す。

中国政府やメーカーがEVや電動二輪で輸出攻勢をかける懸念もある。NEV規制のクレジット収入を当て込んで粗製濫造されたEVや電動二輪が国内で何とか売れているうちは良いが、外資各社の規制対応が進むと、やがて行き場を失う。その時、中国政府は自国の規制や補助金などとセットでEVや電動二輪の輸出に動く公算が大きい。特にASEANは日系メーカーの金城湯池だが、大幅にダンピングされたEVや電動二輪が向かうとどうなるか。中国の「一帯一路」構想になびくASEAN各国の市場で日系メーカーが振り回されかねない。

昨年以降、英仏の閣僚級が将来的に内燃機関車の販売を禁止する方針を表明したり、独フォルクスワーゲン(VW)らメーカー各社が電動車戦略を公表した。ただ、国際エネルギー機関(IEA)の予測では、40年時点でも世界で売られる乗用車の7割にエンジンが載る。EVは、資源争奪や発電段階にまでさかのぼった環境評価など性能以外でも課題が多く、一足飛びに次世代車の主役に躍り出るとは考えにくいというのが業界の見立てだ。
経産省としては、車載電池やコネクテッド、シェアリングへの対応と並行し、EVの普及戦略と自動車政策を戦略会議でパッケージとしてまとめ、アジアを念頭に発信していく考えだ。※詳細は日刊自動車新聞参照ください。

日刊自動車新聞4月19日掲載

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
主催者

経済産業省

対象者 自動車業界