会員向けクルマ
biz

INFORMATIONクルマの情報館

自動車産業インフォメーション

2018年4月9日

第2回AI・人工知能EXPO、自動運転への活用期待

人工知能(AI)の最新技術や活用手法などを紹介する展示会「第2回AI・人工知能EXPO」(リードエグジビションジャパン主催)が4日から6日まで東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催された。昨年6月の初開催と比べ約2倍の300社が出展、展示面積は約3倍に拡大した。AIは自動車業界でも自動運転をはじめ、生産管理、需要予測、接客など、さまざまな分野で活用が期待されており、会場にはAIの最新動向の情報などを求めて多くの自動車産業関係者も足を運んだ模様だ。

展示会でAIの活用提案が目立ったのは、交通・運行管理の分野だ。NTTドコモは、乗客の要望に応じ運行ルートや乗降場所を柔軟にアレンジするモビリティーサービス「AI運行バス」を紹介。複数の利用者の乗車・降車位置の需要をAIがリアルタイム処理で分析し、最適なルートを効率的に運行する。会津若松市内で実証試験を実施した。人口減少が進み、事業者の採算面から公共交通の維持が困難な地域などでも、AIを活用することで効率的な運行が可能になるという。
AIの機械学習の一つであるディープラーニングを採り入れたAIの開発・運用を手がける中国のセンスタイムは、映像で交通流を解析するサービスを初めて公開した。交差点をはじめ、路上の設置したカメラを使ってトラック、乗用車、歩行者などの交通参加者が「どの方向からどちらに向かったか」を、最大12方向・10秒単位で分析する。スムーズな交通流の実現に向けた信号制御での活用を想定しており、将来的には収集したデータを活用して渋滞解消などの交通管制システムへの適用を目指すという。
スクリーンアドバンストシステムソリューションズ(中村憲彦社長、京都市上京区)は、拡張現実(AR)を用いたルートナビゲーションを可能にするアプリ開発用ライブラリ「ナビミカエル」を紹介した。スマートフォンに目的地への進行方向やルートを表示する。ツールを売り込むターゲットは観光誘致に取り組む自治体や工場などで、工場では、進行可能な通路表示によって安全確保に役立つという。
エンターテインメント関連では、オンキヨー&パイオニア(高田陽弘社長、大阪府中央区)が首輪状のスマートスピーカー「AIスマートウェアラブル」を出展した。音楽プレーヤーやネット検索の音声での操作や、検索結果のテキスト読み上げなどができるため、運転中にもハンズフリーで安全に使用できる。
画像認識技術を使って、AIが品質管理を高度化する提案も目立った。NTTコムウェアは、ドローンに搭載したカメラで密漁を監視する画像認識AI「ディープテクター」を応用。キズや汚れの確認など、生産拠点での製品検査での活用を提案する。

また、サプライヤーの武蔵精密工業は、自動車のディファレンシャルユニットの主要部品のべベルギアの品質検査にAIを活用している技術を公開した。AIの画像解析技術を使って、検査の効率アップに加え、作業者の目視による検査を上回るレベルでの問題発見を目指している。検査で蓄積したデータは製品開発や生産技術の高度化にも役立てていく方針で、製品の品質向上につなげていく。

AIが急速に市民権を得ている一方で、これを正しく使いこなせる人材は不足しており、AIに関するエンジニアの育成を支援する動きが活発化している。日本ディープラーニング協会(松尾豊理事長=東京大学大学院工学系研究科・特任准教授)は、昨年から「ディープラーニング検定試験」を開始。エンジニアのプログラミング能力や、経営者、企画担当者の理解度をチェックする試験を用意している。

IT教育事業などを展開するシステムシェアード(徐日柱代表取締役、東京都台東区)は、AIの技術者育成に取り組む企業に教育プログラムを提供する。オンラインの通信教育と集合型研修を組み合わせた3カ月間の講習によって、生データの分析・予測手法をはじめ、AIをビジネスに活用する上で欠かせない基本知識と技術が身につけられるという。

エンジニア不足の中で、離職防止にAIを役立てるアイデアも。人材サービス企業のアウトソーシングテクノロジー(東京都中央区)は、AIで社員の本音を把握し、人材流出を未然に防ぐソリューションを提案する。チャットアプリ上で社員が交わした会話の内容をAIが解析し「辞めたい」という兆候のある人物を抽出、人事担当者にフォローを促す。
変わったところでは、東京弁護士会のリーガルサービスジョイントセンターAI部会がAI関連の法律トラブルを解説するブースを出展した。AIがかかわる自動運転車の事故や、詐欺などの刑事事件での責任の所在、AIで作成した著作物の権利保護など、法務上の課題を紹介した。

一方、高度な自動運転を実現するためにはAIが必要不可欠で、交通事故を減らすことだけでなく、トラックやバスなどのドライバー不足問題解決につながる可能性がある。工場で収集する大量のデータを使ってAIで解析することで工作機械が故障する前兆の発見や、製造物の不具合発生の未然防止などにも有効活用できる。
基調講演でエヌビディアの大崎真孝日本代表兼米国本社副社長は「AIは人手不足問題の解決や、新しいアイデアで人を楽しませ、人を健康にし、ショッピングをパーソナルにして新たな価値を創造する。中でも日本ではものづくりの現場でAIが活躍する」と、AI発展の可能性を強調した。ただ、AIによってシステムは複雑化しており、判断・制御の理由が「ブラックボックス化」する。安全を確保した上で、AIを社会や生活で役立てていくためには、AIの技術の進化に加えて、活用上のルールづくり社会的な受容性を確保することが急務となっている。

日刊自動車新聞4月7日掲載

カテゴリー 展示会・講演会
主催者

リードエグジビションジャパン

開催地 東京ビッグサイト
対象者 自動車業界