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2026年8月20日

EVのF1「フォーミュラE」 東京Eプリ初のナイトレース 電動技術の進化へ「走る実験場」 コストと競争領域を秤に掛けて

 「電気自動車(EV)のF1(フォーミュラ・ワン)」と呼ばれるABB FIAフォーミュラE(FE)世界選手権「東京Eプリ」が7月25日(第14戦)、26日(第15戦)のダブルヘッダーで、東京ビッグサイト(東京都江東区)周辺の一般公道などを使った特設コースで開催された。今回日本で初めて午後8時に決勝をスタートする「ナイトレース」で実施され、照明が当てられた特設コースを、EV独特の「キュイーン」という音とともに、鮮やかなカラーリングが施されたマシンが疾走した。来年の東京Eプリは選手権の最終戦で、出力を向上した次世代マシンでの戦いとなる。電動技術の進化に向けて参戦している日本の自動車メーカーも挑戦を続ける。

 ■エネルギー効率を競う

 東京Eプリは今回が3年目で、午後8時すぎに決勝をスタートした。両日ともに雨混じりの荒れた天気で、厳しい路面コンディションでのレースとなった。地元グランプリとなった日産自動車の「ニッサン・フォーミュラEチーム」は26日の第15戦で4位となった。ヤマハ発動機の「ローラ・ヤマハABTフォーミュラEチーム」は10位が最高位で、両チームともに表彰台を逃した。

 日産は2022年から単独で参戦しており、ヤマハ発は24年から英ローラ・カーズに電動パワートレインを供給する。FEはシャシーや電池は共通で、パワートレインが競争領域となる。勝敗を分ける大きなポイントがバッテリーマネジメントで、展開を読んでゴールする際「電欠」する一歩手前まで電気を使い切るチームの運営力とドライバーの制御力が問われる。

 日産FEチームの岩瀬拓朗チーフパワートレインエンジニアは「電動化戦略を体現すると同時に、極限状態で磨くことによって技術を進化させる場だ」と、FEへの参戦意義を語る。FEに参戦する自動車メーカーやサプライヤーは、新技術を投入するのに制約があるものの、FEを市販用EVや電動技術に応用するための「実験場」として活用するために参戦している。運営側もこうしたニーズに対応するため、FEの規定を段階的に見直している。

 ■来季はマシンが進化

 来季のFEでは、マシンが4世代目となる「ジェネレーション4(Gen4)」に切り替わる。最大出力は600キロワット(約816馬力)と、25/26シーズンのGen3の1.7倍に引き上げられ、フルタイム四輪駆動方式となる。日産チームの岩瀬氏は「規定の自由度も上がり、日産の技術を適用できるところが増える」と、Gen4に期待する。ワンメイクのタイヤも韓国のハンコックタイヤから、日系メーカーとして馴染みの深いブリヂストン製に切り替わる。

 ■電池開発に賛否も

 EVは駆動用電池が心臓部で、パフォーマンスを大きく左右するが、現在のFEはワンメイク供給となっている。ただ、将来的には駆動用電池が競争領域となる可能性があり、水面下で議論が進んでいる。FEのジェフ・ドッズCEO(最高経営責任者)は「まだ決めていないが、最先端の電池技術を導入したい。いずれにせよ予算制限を引き続き導入していく」とし、一定の制限を設けながらも、参戦チームが駆動用電池を独自調達や独自開発できる余地を残したい考えだ。

 駆動用電池がFEの競争領域になれば、ここで培った技術を応用することで市販用EVの進化につながる。ただ、駆動用電池のコストは高く、開発競争が激化すれば、参戦費用が跳ね上がるリスクがある。ヤマハ発の原隆FE技術統括は「当社の規模では途端に厳しくなる」と、懸念する。参戦チームの運営状態などにも影響することから今後も議論が続きそうだ。

 F1と比べてまだまだ認知度に課題を残すFE。開発競争が激しくなり、市販用EVなどにもその技術が引き継がれればレースの意義が際立つ。その半面、自動車メーカー同士の開発力勝負となれば資金力に余裕のあるチームが有利となり「スポーツ」とは呼べなくなる恐れもある。

 発足12年目を迎えたFE。これまでもレースの魅力を引き出すためにマシンを進化させ、レギュレーションも見直してきた。今後はどこまで参戦チームの自由度を上げて技術開発の切磋琢磨を促しつつ、公平なレースを運営していくのか、難しい判断を迫られている。

 

(中村 俊甫)


技術規定の進化で来年はさらに高速化する

対象者 自動車業界

日刊自動車新聞8月20日掲載