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自動車産業インフォメーション

2026年8月18日

自動車メーカーの2026年4~6月期決算、全社増収も見通し不透明 中・米で競争激化 中東影響で原材料高騰も

 上場する自動車メーカー9社の2026年4~6月期決算は、全社が増収となったものの、中東情勢や原材料価格の上昇の影響で思うように利益を上積みできていない。さらに中国市場の冷え込みや米国での競争激化といったリスクも顕在化した。“歴史的円安”でも各社の通期業績は慎重な見通しだ。



■円安効果は環境悪化で打ち消し
 トヨタ自動車とホンダは、26年4~6月期時点で通期営業利益見通しを上方修正した。どちらも米ドルの想定為替レートを10円円安としたことで、トヨタは4200億円、ホンダは1135億円、利益を押し上げる想定だ。8月中旬時点のドル円相場は昨年同月よりも約10円円安の1ドル158円前後で推移している。

 その半面、スバルやマツダといった米国販売比率が高いメーカーなど、通期見通しを据え置いた企業が過半数だった。外部環境への懸念が高まっているためだ。

■中東影響は輸送コストまで拡大
 特に中東情勢の悪化による影響は広範にわたっており、長期化しそうだ。

 スズキは原材料価格の高騰を受けて、通期見通しを300億円下方修正した。「当初想定を上回る規模、かつ長期間継続する」(大石昌治財務本部長)と判断したという。特にアルミや銅、ナフサ由来の製品の価格が高騰しているといい、スバルの江森朋晃専務執行役員も「変動が激しく先読みが難しい。もう少し下がると思いつつ、何かあると変わる不安定さから(通期の前提条件を)一旦据え置かざるを得ない」と話す。

 完成車輸送にかかる海上輸送コストも上昇し、船便も手配しづらくなっている。いすゞ自動車は4~6月期、輸出する約3000台の販売に影響があったという。山北文也取締役常務執行役員CFO(最高財務責任者)は「正直、中東情勢を読むのは難しい。中近東以外の(輸出)船にも影響が出たのが強いて言えば想定外だ」と話す。

 為替も動きが激しい。7月末には日米両政府の協調介入で、対ドルレートで一時5円以上の急激な円高となった。トヨタの東崇徳経理本部長は「為替はわれわれとしても安定的に推移することが事業運営する上で非常にありがたい。しっかり動きは注視していきたい」と話す。

■中・米市場は競争激化
 今後懸念されるのが中国市場の冷え込みだ。景気の低迷で自動車の需要自体が低迷する中、日本メーカーは地場ブランドとの厳しい競争を強いられている。トヨタの東経理本部長は「市場の全体的な厳しさの中で、いかに生き残りをかけてやっていくかを今試されている」と話す。

 日産自動車は中国での通期販売台数見通しを71万台から58万台と2割近く下方修正した。調査会社マークラインズによると、東風日産の電気自動車(EV)セダン「N7」は昨年8月に約1万台を売ったものの、今年5月は2000台以下に急減した。

 イヴァン・エスピノーサ社長は「一部地域では新エネルギー車の構成比が高い一方、ガソリン車が多いところもある。地域別にアプローチしている」と話す。1つの巨大市場と見なすのではなく、都市部から山間部まで地域に合わせた戦略が必要だと強調する。

 米国市場も異変が生じている。スバルは4~6月期、販売奨励金の増加が営業利益を249億円押し下げた。江森専務は「他社も『在庫一掃セール』や『ゼロ金利』施策を打って、スバルとしてもある程度、奨励金を上げて対応せざるを得なかった」と話す。

 現地ではインフレと金利高が続き、自動車ローンが組みにくい環境にある。さらにガソリン価格も急騰し、高価な車両の販売が伸び悩んでいる。

 ただ、日本メーカーが得意とするハイブリッド車(HV)の需要は手堅く、引き続き収益の柱となる。ホンダは北米でのHV販売に支えられて、4~6月期は増収増益となった。HVは奨励金を抑えられる傾向にあり、川口正雄執行役CFO(最高財務責任者)は「競争も激化してくると思うが、奨励金は抑えながらやっていきたい」と話す。

■調達網のリスク再び
 7月下旬に発生した熊本地震による影響も全容が見えない。トヨタやダイハツ工業などで生産に影響が出たほか、ホンダでは二輪車生産の熊本製作所(熊本県大津町)だけでなく、埼玉製作所(埼玉県寄居町、小川町)や鈴鹿製作所(三重県鈴鹿市)の四輪車生産にも影響が出ている。ダンパーなどの調達が困難となったためだ。

 日産も部品調達の影響で、国内外の主力モデルを生産する福岡県苅田町の2工場の一部ラインの稼働を止めた。エスピノーサ社長は8月上旬時点で約5000台の生産に影響が出る見通しだと話し、「どれくらい早く挽回できるのか検討している」と説明する。

 27年3月期は、トヨタやマツダ、いすゞが過去最高の売上高になる見通し。ただ、電動化や知能化への開発投資に加え、外部環境の急速な悪化により、利益ベースでは堅調とは言い難い。収益基盤を強化しつつ、常態化するリスクに機動的に対応する力が問われている。

 

対象者 自動車業界

日刊自動車新聞 8月18日掲載