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自動車産業インフォメーション

2026年7月28日

自動車メーカー、「レベル2++」認定で国内の技術底上げ契機に 一部はコストと需要性を慎重に見極め

国土交通省が創設する認定制度「レベル2++(プラスプラス)」を巡り、国内自動車メーカーの間で開発の方向性や投入のタイミングに対するスタンスの違いが見えてきた。人工知能(AI)が認知や判断、制御を担う「エンド・ツー・エンド(E2E)」が登場し、一般道を含めた高度な運転支援が現実味を帯びてきた。日産自動車はE2E新興と手を組み早期実装に意欲を示す一方、一部メーカーでは安全性や需要を見極めようと慎重な姿勢を示す。同領域は米テスラや中国メーカーが先行している。国交省の認定制度は国内メーカーの技術底上げを促す契機となるが、積極的な商品投入が無ければ普及につながらない懸念がある。

中国ではE2Eによる一般道の運転支援が普及するが…

■E2EによるADAS実装に前のめりな日産

レベル2++は「レベル2(高度な運転支援)」の機能を高めることで運転者の関与をほぼ必要としない高度な運転支援技術で、一般道の交差点など複雑な交通環境下でも高精度な自動運転を可能とする。運転主体をシステムが担う「レベル3(条件付き自動運転)」とは異なり、あくまで運転者は監視責任があり、乗用車向けの搭載が想定されている。

日産はE2Eスタートアップの英ウェイブ・テクノロジーズの技術を活用した運転支援技術「次世代プロパイロット」を次期型「エルグランド」に搭載し、2027年度にも市場投入する。国交省は同技術がレベル2++に相当すると定義する。

高速道路での運転支援で手放し状態「ハンズオフ」機能を国内メーカーで初めて実現した同社は、一般道での高度運転支援システム(ADAS)の早期実装に意欲を示す。4月に公表した長期ビジョンでもAIを事業の軸に据え、国の新規定という追い風を生かしてE2Eによる一般道のハンズオフ機能を前面に押し出す。

■コストと需要のバランスが導入タイミングを左右

一方、ADASの先駆け「アイサイト」を手掛けるスバルは、レベル2++の需要性を慎重に見極める方針を示す。同社は20年代後半に一般道でのハンズオフを可能とした次世代アイサイトの投入を計画している。ADAS開発担当者は「(交差点を含む)一般道のハンズオフは信頼性をかなり上げないといけない。コストと需要のバランスが(市場投入の)重要な判断となる」と明かす。

スバルは一般道でのハンズオフ機能の実装について、E2Eだけではなくアイサイトで実績のある「ルールベース」型と高精度地図との組み合わせを想定している。LiDAR(ライダー、レーザースキャナー)搭載は「必須要件ではない」(同)が、運転支援高度化には車両コストの増加は避けられないとみる。

E2Eは一般道を滑らかに走行できるだけでなく、ヒューマンエラーによる交通事故を軽減できる可能性がある。一方で、人間でも回避不可能な事故はAIの能力が高まっても防ぎ切れない。

実際、AIによる高度運転支援が普及する中国でも事故は起きている。25年、スマートフォン大手の小米科技(シャオミ)が手掛ける車両による死亡事故は、運転手がシステムを過信したことが要因だとされている。

■トヨタはインフラとの協調を重視

E2E型の開発競争が過熱する中でも、トヨタ自動車は車と人、交通インフラが協調した「三位一体」のシステムによって安全性を高める方針を示す。E2Eなど自律型の運転支援にインフラ協調が加わればセンサーの死角を克服でき、危険予測の精度が一気に高まる。ただ、インフラ整備には膨大な費用と時間が必要だ。

もっとも、中国市場ではE2E新興のモメンタと組み、一般道での運転支援システムを実装済みだ。モメンタはトヨタだけでなく日産など海外勢がこぞって採用している。技術進化の早さと地政学リスクを踏まえ、各社は現地発の技術を使う戦略を取る。

■レベル3と同じ轍を踏まないために

ホンダは21年、高級セダン「レジェンド」でレベル3を世界で初めて実用化した。ただ、販売価格は1000万円を超え、販売台数はわずか100台にとどまった。その後、ホンダに続いてレベル3搭載車を国内に投入するメーカーはなかった。

ホンダは、一般道で手放し運転可能な「ナビゲート・オン・オートパイロット(NOA)」と呼ぶAI自動運転技術を28年投入の新型「ヴェゼル」に搭載する。量販車種の小型SUVへの搭載とあってNOAの価格設定が注目される。

■購入補助による需要底上げに期待が高まるが

レベル2++はシステムがどれだけ一般道を滑らかに走行しても、運転責任は依然としてドライバー側にある。自動車メーカーは安全性を最優先にしながらもユーザーが自身の責任が問われる自動運転車にどこまでコストを許容できるかを見極める必要がある。

政府は認定制度創設に伴い、購入費の一部補助も検討している。需要の底上げに期待が高まる一方、国内メーカーによる対象車両の投入が遅れれば、こうした補助制度は先行する海外新興勢に塩を送る形になりかねない。国内の一般道における海外勢の対応力は未知数だが、少なくともコスト競争力は国内メーカーに対して高い。レベル2++が新たな競争軸と成り得るか、制度の枠組みや補助内容を見据えた各社の神経質な探り合いは続きそうだ。

日刊自動車新聞7月28日掲載