2026年5月28日
経産省と自動車業界団体が実態調査 取引適正化へ“生の声” 会議体発足で金型問題改善
部品を製造するための金型の無償保管の要請や、製造コストが上昇しても部品納入価格の交渉をしないなど、自動車産業での不公正な取引の是正を求める声が強まる中、経済産業省は自動車メーカー、部品メーカーなどに対して実態調査を実施し、企業の社名は原則、非公表で延べ1400件以上の“生の声”を公表した。このデータを生かして自動車業界の悪しき商習慣を改め、公正な取引の浸透を図ることはできるのか、今後の取り組みが注目される。
自動車業界では下請代金支払遅延等防止法(下請法、現・中小受託取引適正化法)違反で、公正取引委員会から再発防止の勧告を受ける企業が後を絶たない。ディーラーが板金事業者に代車を無償で提供させるなど、流通業界でのケースもあるが、とくに目立つのが自動車メーカーや部品メーカーが取引先に、部品を製造するための金型を無償で保管させる事案だ。
取引先に金型を無償保管させる行為は、以前、自動車業界の商習慣として定着していただけに改善が課題となっている。是正に向けて経産省は今年2月、新たな会議体「自動車サプライチェーン取引適正化会議」を立ち上げた。日本自動車工業会、日本自動車部品工業会なども参画しており、まず実態を調査するため、発注側と受注側双方の意見を集め、企業名以外の結果を公表した。
実態調査は、金型や補給品の取引、代金決定などで改善が必要な事項を自由回答してもらった。調査票には個社を特定せず、回答を会議以外の目的に使用しない条件を明示した。金型については、保管費用、型などのリスト化、継続保管、メンテナンス・補修費用などについて延べ500件以上の回答が寄せられた。
受注側企業の回答では「顧客から徐々に費用を支払ってもらえることになった」など改善傾向にあることを報告する声もあった。価格交渉しても査定価格が納得できるレベルではないことや、取引先ごとにルールが異なること、支払い根拠(エビデンス)の提出など、受注側の立場が弱く、負担が大きいことを問題視する声もあった。
金型や補給品の保管スペースの問題を指摘する声も多い。受注側企業は、補給品の供給に備えて量産終了後も金型や治具などを長く保管する必要がある。近年では自動車の使用年数が延びており、保管場所の確保が負担になっている。会議に参加した日本金属プレス工業協会は、社員駐車場の先まで続く不要型の写真を紹介、「発注側の『念のため』という要請が受注側のスペースを奪ってきた」と指摘した。
政府が2019年に公表した「型取引の適正化推進協議会報告書」では、量産終了から遅くとも15年を経過した製品に関連する金型は、廃棄を前提に当事者間で協議するとの目安が示された。ただ、金型の廃棄にはリスト化する必要があり、その数は膨大で、中小企業にとって負担は大きい。調査では「リスト化に工数がかかる」などの声もあった。
実態調査の結果を踏まえた会合では、業界団体や有識者から「金型を一定の年限で廃棄するなど思い切ったルールづくりが必要」「(金型処理の)優先順位を決め、(受発注企業の)認識を合わせて取り組む必要がある」「標準化したフォーマットや、ガイドラインを示す必要がある」といった意見があった。
同会議では次回は9月頃に補給品をテーマに話し合う予定だ。中東情勢の悪化に伴うサプライチェーンの混乱や原材料価格高騰など、自動車業界を取り巻く環境は不透明さを増しており、取引適正化に逆行する動きも懸念される。越智俊之経済産業大臣政務官は「取引適正化の浸透は一朝一夕に進むものではない」と指摘する。企業を取り巻く経営環境が大きく変化する中にあっても、取引適正化の浸透に向けた地道な取り組みと発注側企業の意識改革が求められる。

(堀 友香)
| 対象者 | 自動車業界 |
|---|
日刊自動車新聞5月28日掲載












