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2026年5月13日

日本精工とNTNの経営統合、背景に厳しい事業環境 台頭する中国メーカー 規模と合理化で事業基盤強化へ

日本精工とNTNが5月12日、2027年10月に共同持株会社の設立という形で経営統合を発表した。実現すれば世界最大規模の軸受けメーカーが誕生する。国内大手2社が手を組む背景には、自動車や産業機械などこれまで得意としてきた分野での成長鈍化や、台頭する中国メーカーとの競争激化といった厳しい事業環境がある。生産の集約や調達の最適化で合理化を図るとともに、統合によるスケールメリットを生かして事業基盤を強化。成長分野にもリソースを投入し、グローバルで勝ち残れる競争力を確保する。

「日本の軸受け産業として、国際競争力の維持のためには国内での業界再編が必要と認識している」―。同日開いた会見で日本精工の市井明俊社長・CEO(最高経営責任者)が語った。NTNの鵜飼英一社長も「世界情勢が変動する中、互いの力を発揮して競争に打ち勝つことが必要」と述べた。

経営統合後の戦略には、開発、生産、販売の効率化やサプライチェーンの強靭(きょうじん)化、補修市場などの販売強化を挙げる。またロボットや医療、ドローンなどの新規分野の事業創出も目指す。自動車についても2社の技術を組み合わせていく。これらの領域で幅広くシナジーを創出する方針だ。

日本精工は22年、26年度を最終とする中期経営計画を策定。コロナ禍の収束に伴う市場回復を期待して、電動車向け製品の拡販や産業機械分野の成長を狙った。だが中国経済の伸び悩みやインフレ、欧州製造業の不振、米国の関税政策などが重なった。構造改革を進めつつ、1年前倒しで計画期間を終了し、仕切り直しを図っている。

一方、NTNの自動車事業は収益性が低く、25年3月期業績は赤字だった。事業環境は日本精工と同様に厳しく、24年度からの現中計下では拠点再編を含む構造改革を進めてきた。

両社ともに収益改善を図ってきたものの、既存市場の大幅な成長は「期待できない」と見ており、価格競争力に勝る中国企業の台頭など、競争は厳しさを増す。鵜飼社長は会見で「新興国のメーカーが入る中で、価格破壊が起きており、適切な利益の確保が厳しくなっている」と明かす。一方で、「ロボットやフィジカルAI(人工知能)が36年にかけて拡大する」(市井社長CEO)とみて、将来の成長分野に対し布石を打っていく必要もあった。

“機械産業のコメ”と呼ばれる軸受けは、規模がものを言う商材でもある。このため欧米でも業界首位であるスウェーデンのSKFや独シェフラーなど大手企業への集約が進んでいる。今回の統合が実現すれば、日本でもSKFに並ぶ規模のメーカーが誕生することになる。その中で今後、経営統合の実現に向けて独占禁止法などへの対応を進めることになる。

日本精工とNTNは、互いに100年以上の歴史を持つ老舗企業だ。事業内容や規模など類似点の多い両社が、生き残りに向けて、シナジーを最大限発揮する体制が構築できるか。今後の焦点の一つとなる。

会見に登壇した日本精工の市井明俊社長・CEO(左)とNTNの鵜飼英一社長

対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞 5月13日掲載