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自動車産業インフォメーション

2026年4月23日

〈サステイナビリティー2026年問題〉問われる具体的行動 近年は企業も開示を強化

 近年は、マテリアリティー(重要課題)と経営戦略との結び付きがより意識されるようになり、企業も開示を強化する。

 

【事例① 環 境】

 CNプラント新設効果を見える化

 

 鋳造工程を抱えるジェイテクトではガス燃焼による二酸化炭素(CO2)排出を減らすため、2024年6月に水素技術の実証施設「CNラボ」を設置。25年12月には花園工場(愛知県岡崎市)に「CNプラント」を新設した。アルミ部品の鋳造工程に水素を燃料とする「水素バーナー式アルミ溶解保持炉」を導入し、26年夏頃の運用開始を目指す。

 

 

 

 CNプラントには、制御の知見に加え、高耐熱リチウムイオンキャパシタ「Libuddy(リバディー)」など自社製品が生かされている。将来的には外販も視野に入れる。経営管理本部の鈴木理絵領域長は「社内で実装することで、導入による効果やデータを取ることができる。(環境の取り組みが)ビジネスにつながっていくところまで考えられるようになったのは、ここ数年の大きな進歩だ」と話す。

 

 

 

 住友電気工業は、超硬工具の原料となるタングステンの再資源化に取り組む。希少金属のタングステンは、材料の大部分を中国からの輸入に依存しており、安定調達が課題だ。同社は、部品加工などに用いた刃先を回収し、高純度の原材料に再生する技術を21年後半から事業化した。特設ウェブサイトを通じた情報発信にも力を入れる。羽藤秀雄副社長は、課題としてコストを挙げ「市場の外部性(企業の行動が第三者に影響を与えること)について、国策や顧客の動向を把握しながら、コミュニケーションを通じて自社ができることを行っていく」と語った。

 

【事例② 安 全】

 セーフティー製品で命と生活の質守る

 

 

 豊田合成は、30年までの中期経営計画で、エアバッグの生産個数を22年度比1.5倍にすることで、年間2万人の命を守る目標を掲げる。自社製品の貢献を数値化する上で、①自社製品のシェア②どれだけ性能が高度化したか―を考慮する。特に大きな効果が見込めるのがインドだ。外資の誘致を掲げるインド政府の方針に基づき、エアバッグの開発で提携するダイセルと共に、インフレーターの現地調達化を他社に先駆けて実現するなどしている。二輪車用エアバッグの普及も目指している。

豊田合成は二輪用エアバッグも開発中だ

 

 同社はまた、滋賀医科大学などとの研究の成果を、自動車安全技術国際会議(ESV国際会議)や国際シンポジウム「エアバッグ2026」で発表。SS事業本部本部長の山本直執行役員は、「交通事故で顎(あご)や顔面を骨折すると、強い痛みや食事ができないなど、日常生活に大きな影響を及ぼすことが分かった」とし、命を守るだけでなく、生活の質を守る製品づくりにも役立てられているという。また、ユーロNCAP(自動車アセスメント)へのワーキンググループに参画し、安全性評価(レーティング)の国際ルールづくりにも積極的に関与している。

 

 

【事例③ 調 達】

 RBA規範対応へガイドライン改定

 

 

 

 NGKは、持続可能な調達の推進に力を入れる。労働環境や環境問題への対応を明記した国際基準「RBA行動規範」や、日本の自動車メーカーも参画する「ドライブ・サステイナビリティ」への対応要請が増えたことなどを踏まえ、10年度に「NGKグループCSR調達ガイドライン」を制定。24年7月に「NGKグループサプライヤー行動規範」に改定した。

 

 

 

 全面改定で大きく変えたのが労働安全衛生だ。RBA基準を念頭に、確認すべき項目を増やしたほか、緊急時の安全対策に関わる設備をグローバル基準に合わせた。サプライヤーに対してもマネジメントシステムの構築を求める。石原執行役員は、「現時点で深刻な問題は見つかっていないが、一つでも何かあると、われわれを通じて最終的には自動車メーカーや顧客に迷惑がかかる」とし、問題の早期発見や、解決に向けたサプライヤーとのコミュニケーションや支援を強化する考えを示した。

 

 活動レベル上げる契機に

 

 情報開示の目的は、企業価値を高め、中長期の成長につなげていくことにある。豊田合成の山本秀俊経営企画部長は「開示のための開示では工数がかかりすぎる。開示に対するフィードバックを活用し、活動をレベルアップする起爆剤にしなくてはならない」と説く。

 

 

 

 近年、各社が力を入れているのがSR(株主向け関係構築)活動だ。主要株主に対し、個別に対話の機会を設け、開示情報に関して意見を交わす。住友電工の羽藤副社長は「機械的・形式的な判断をせず、実態について理解を深めてもらうように働きかけることが重要だ」と狙いを説明する。

投資家の関心も高い(デンソーの株主総会、昨年6月)

 

 デンソーは、株主対話を単なる説明の場ではなく「経営や事業へのインプットの場」と位置付け、株主・投資家の生の声を重視する。前田経営管理本部長は「双方向の対話を通じ、社会や市場の変化、期待とのずれを早期に捉え、戦略の実効性を高めている」と語った。

 

 

 

 気候変動や人権など社会問題への関心が高まる中、サステイナビリティーの取り組みは、単なるイメージアップから、より具体的な行動が問われるようになった。企業活動を通じて社会課題と向き合うことは、一時的なコスト増やリスクの顕在化など痛みを伴うこともある。ステークホルダーの共感を得て、共に成長する意識を醸成できるか。SSBJ基準の導入をきっかけに、企業は情報開示のあり方を改めて考える時に来ている。

 

 

日刊自動車新聞4月23日掲載