2026年3月27日
SDVで縮まる自動車メーカーと半導体メーカーの距離 1社への過度な依存はリスクも
自動車メーカーと半導体メーカーとの関係が変化している。従来はティア2(二次下請け)の取引関係だった両者だが、車載に適した性能の半導体を安定調達できるよう、直接協業するケースが増えている。背景にはクルマの「知能化」や、中国メーカーの急成長により激化する開発競争がある。ただ、調達スキームの変化は新たな課題や弊害も生んでいる。
「統合制御ECU」の性能アップに向けて協業するスバルの柴田英司執行役員CDCO(写真左)とインフィニオンのシェイファー氏
車載ECUは機能の統合と性能進化が進み、半導体への要求も高まっている(BMWの次世代EV向け統合ECU)
■次の進化へのニーズを探る
3月26日、スバルと独インフィニオン・テクノロジーズは都内で会見を開いた。両社は今月中旬、スバルの次世代車向けに最新世代のマイコンを供給すると発表していた。インフィニオンは車載半導体で世界シェアトップを誇る。来日したエグゼクティブバイスプレジデントのピーター・シェイファー氏は「カメラベースの安全分野で『スバル』は市場のリーダーだ。さまざまなことを学び、次のステップへの進化の必要性やニーズを探れる」と意義を語った。
スバルはインフィニオンのマイコンを、2020年代後半の実用化を目指す次世代車向けの「制御統合ECU(電子制御ユニット)」に搭載する。カメラやセンサー、ドライバーの運転操作といった入力を処理し、パワートレインやシャシーの制御に素早く反映させる。安全性を高め、スバルらしいドライバーの意に沿った走りを実現するには、大容量の情報を遅延なく処理できる能力や、高いサイバーセキュリティー性能が求められた。スバルはインフィニオンと、新しいチップの開発初期段階から要求性能やコストを話し合い、最適な性能での調達に至ったという。30年にスバル車が関係する「死亡交通事故ゼロ」を実現する上でも重要な一歩だ。
■商慣習を超えて直接協業する流れ
他社でも自動車メーカーと半導体メーカーが開発契約を結ぶケースが増えている。ホンダもインフィニオンとパワー半導体などで協業するほか、ルネサスエレクトロニクスとは次世代電気自動車(EV)向けに、世界トップクラスの処理能力を持つSoC(システム・オン・チップ)で契約を結んでいた。またマツダもロームと、先端素材である窒化ガリウム(GaN)製パワー半導体の共同開発で協業している。
これまでは半導体が搭載された部品をティア1(一次下請け)から調達するケースが主流だった。商流の変化の背景には、ソフトウエア・デファインド・ビ―クル(SDV)時代を見据えた開発競争の激化がある。特に中国メーカーは車載ソフトの更新による機能拡張性と安価な車両価格を両立しており、新興市場などで急成長を遂げている。日本メーカーも次世代車での進化を見据え、車載向けに最適化された半導体を、コストを抑えつつ調達することが求められている。
調達の安定化も狙いの一つとみられる。20年のコロナ禍後、自動車産業は世界的なレガシー半導体不足に陥った。また、先端半導体市場も30年には25年の1.4倍の規模に拡大する見込みとインフィニオンは予測する。そのため自動車メーカーは、他社に先駆けて半導体メーカーと直接組めば、求める性能を実現するためのカスタム半導体を安定的に調達することができる。
■弊害や新たな課題も…
協業にはリスクもある。代表例が、特定企業への依存度が高くなる「ベンダーロックイン」だ。協業先での開発遅れや性能が劣った場合、クルマ自体の競争力にも影響を及ぼすリスクがある。さらにIT業界では、他社製品へ移行させないために、あえてシステムに汎用性を持たせないような開発を行う動きもみられ、問題視されている。スバルは同じ制御統合ECUでも、画像センサーは米オンセミ、画像処理のSoCはAMDなど「各社の得意分野で最適なメーカーを選んでいる」(担当者)と、協業先を分散して対応している。
サプライヤーからは、調達スキームの変化に困惑の声も聞こえる。ある車載電子部品メーカーの幹部は「今まで半導体メーカーはティア1と強固に組んでいたが、自動車メーカーが入ってきて『どう付き合っていけば良いのか』という声も聞こえる。品質やライセンスのトラブルが起きた際、誰がどう責任を持つのか」と話す。例えば、サプライヤーが開発したデバイスでも、自動車メーカーが半導体を直接指定するケースが多くなるとみられる。その場合、責任の所在があいまいになることが懸念されている。
インフィニオン日本法人の幹部はスバルとの協業について、「手頃な価格にこだわり、あくまでレベル2(高度な運転支援)の進化を目指している。目標が明確で、ある種割り切っており、高性能品だけでなく全体を進化させることができる」と話す。一方、トヨタ自動車や独フォルクスワーゲン・グループといった台数規模が多いメーカーでは、要求もブランドやセグメントごとに大きく異なり、一つの製品でどこまでカバーするかという視点での対応が求められる。半導体メーカーとしても自動車メーカーとの直接取引で最新の開発動向を学び、自動車事業の強化につながるメリットがありそうだ。
| 対象者 | 自動車業界 |
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日刊自動車新聞3月27日掲載













