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2026年3月17日

国内ロボタクシー市場、本格立ち上げへ 日産・ウーバーらが参入 なおも残る事業化の壁

国内でも自動運転タクシー(ロボタクシー)市場の立ち上げへの機運が高まっている。日産自動車と人工知能(AI)スタートアップの英ウェイブ、米配車大手ウーバーテクノロジーズは、2026年後半から都内で試験運行を始める計画を発表した。都内ではすでに米ウェイモが日本交通と組んでデータ収集を進めている。ドライバー不足への対策や都市交通の効率化につながる可能性があり、米国や中国では商用運行が始まっている。一方、各国の実証では交通事故も発生しており、AIによる自動運転の制度設計や社会受容性にも課題を抱えているのが実情だ。

国内ロボタクシー市場への参入を発表した日産とウェイブ、ウーバー

 

■タクシー需要の高まりとドライバー不足

 

国内ではタクシー運転手不足が深刻化している。国土交通省によると、22年度末時点でタクシーは全国に約21万台以上あるものの、タクシー運転手の有効求人倍率は3.38倍と、全職業平均の1.14倍を大きく上回っている。平均年齢も60.2歳と高い。さらに近年は訪日客の増加により、問題は一層悪化している。そこで活用が検討されているのがロボタクシーだ。

 

日産とウェイブ、ウーバーの3社は3月12日、ウェイブの自動運転用AIソフトを搭載した車両の走行試験を都内で始めると発表した。ウェイブとウーバーは世界10都市でロボタクシーを走る計画を掲げており、都内での走行もその一環。今後は台数の拡大や無人化、全国展開も視野に入れる。

ウェイモもデータ収集を進めるが、サービス開始時期は未定

昨年4月から、都内で先んじてテスト走行を始めているのが米アルファベット(グーグル)傘下のウェイモと日本交通陣営だ。ウェイモはトヨタ自動車とも協業している。まずは乗客を乗せずにデータ収集から始め、将来の事業化を目指す。ウェイモの担当者は今年1月、日本での自動運転運行について「時期は言えないが大きな問題はない。東京の複雑な道路環境も十分対応できる」と日刊自動車新聞の取材に答えた。

 

政府もロボタクシーの普及を政策的に後押ししており、地域や観光の「足」と位置づける。今年1月には、30年度に1万台の自動運転サービス車両を普及させる計画を公表した。国土交通省はドライバーレスの車両が公道を走れるよう、道路運送車両法に基づく保安基準の改正も議論している。

 

■中国では早くも市場競争

 

すでに海外では商業運行が始まっている。ウェイモは米サンフランシスコやロサンゼルスなど5都市で有料サービスを展開しており、26年にはワシントンなど10都市以上への拡大を計画する。一部地域では高速道路での走行への対応も始めた。電気自動車(EV)大手のテスラもテキサス州で昨年6月から、アマゾン傘下のズークスもサンフランシスコなどで昨年末に商用運行を始めている。

 

動きが活発なのが中国勢だ。北京市や上海市、深セン市などで複数の事業者が商用運行を始めている。蘇州市では日産の現地法人と実証している文遠知行(ウィーライド)は、アラブ首長国連邦(UAE)などにも進出しようとしている。

 

■日本固有の高い要求を乗り越えられるか

 

26年を世界的な「ロボタクシー元年」とする見方もあるが、日本には固有の課題がある。特に都市部は、路上駐車が多い狭路を歩行者や二輪車、バスが入り乱れて走る特異な環境だ。そもそも、先行する中国や米国市場とは走行車線が異なり、海外の自動運転AIをそのまま持ち込むのは容易ではない。

 

無人での商用運行に向けては、「人間より安全であること」をいかに証明し、関係省庁や自治体からの認可を得られるかが課題となる。特に生成AIによる自動運転は、事故の際に判断の根拠を説明できない「ブラックボックス問題」などから懸念する声も根強い。国だけでなく、自治体や住民からの社会受容性も醸成する必要もある。ウーバーの責任者は「これまで地方自治体や国との信頼関係を築いてきた。同様のアプローチを取りたい」と話す。

 

サンフランシスコでは昨年12月、停電で信号機が停止し、多数のウェイモ車両が一時、街中で停止する事態となった。日本市場は自動運転車の安全性に特に鋭敏だと言われており、予測が難しい状況でもトラブルが起きれば問題となる。21年にトヨタの車両が「東京2020パラリンピック」で起こした人身事故は、オペレーターの人為的ミスだったが大きく報道された。米ゼネラル・モーターズ(GM)傘下のクルーズの人身事故は事業撤退のきっかけとなり、提携していたホンダの国内でのロボタクシー運行計画に影響を及ぼした。

 

無人状態でも誰もが安全に利用できる技術と環境を整え、日常的に「乗りたい」と思う利用者をどれだけ増やせるか。実証から事業化へ、ステップアップの道のりはまだまだ険しそうだ。

日刊自動車新聞3月16日掲載