2026年2月27日
日野・三菱ふそうの経営統合、公取委の承認得る

日野と三菱ふそうの統合の最終合意発表会見(25年6月)
4月に予定する日野自動車と三菱ふそうトラック・バスの経営統合について公正取引委員会は2月26日、承認する旨を両社に通知した。ただし、「(両社が)提案した措置が講じられることが前提」であり、販売面ではトラックとバスのそれぞれで細かな制約が生じることになる。市場の寡占化を防ぐため、スウェーデンのスカニアグループを新たな競争者として育てるといった内容も含まれる。日野と三菱ふそうは、販売現場では競争関係を維持しつつ、車両開発などでシナジーを生み出し、「日本の商用車メーカーとしての競争力強化」を実現できるかがポイントとなりそうだ。

公取委は、アーチオンといすゞグループとの価格カルテルなどを懸念する
両社は新会社アーチオン(カール・デッペンCEO、東京都品川区)を設立し、傘下の事業会社となることで統合する。アーチオンには三菱ふそうの親会社ダイムラー・トラックと、日野の親会社であるトヨタ自動車がそれぞれ25%を出資する。ただし議決権ベースではダイムラーが26.7%、トヨタが19.9%とする。特にトヨタがシェアを一定程度持つ小型車事業で、アーチオングループとの独立性を担保するためだ。
■車型ごとに求められる細かな販売制約
公取委は今回、統合後の事業領域について、(1)大型トラック、(2)中型トラック、(3)小型トラック、(4)大型観光バス、(5)大型路線バス、(6)マイクロバス、の6つに分類。それぞれで市場競争の阻害を防ぐ措置を講じることを条件に承認した。競合が実質的にいすゞグループ(いすゞ自動車およびUDトラックス)のみとなり、両グループ間での車両価格などのカルテル(事前調整)に及ぶ恐れを排除するためだ。

スカニアの大型トラック
(1)の大型トラックと(4)大型観光バスでは、独フォルクスワーゲングループ傘下のスカニアグループ(スウェーデン)を競争相手に育てるための施策が求められる。日野と三菱ふそうの販売拠点で、スカニア車のアフターサービスなどを担うことになる。
(2)中型トラックと(5)大型路線バスでは、経営統合後、日野と三菱ふそうの両事業会社の情報共有を禁じる。(2)では2社の直営販売会社が重複する地域は、一方を独立系販社とすることも求められる。すでに日野は直営販社6社の株式の80%超を台湾・和泰汽車などに売却すると発表している。
(3)小型トラックと(6)マイクロバスでは、トヨタを競合メーカーとすることで市場競争を担保する。トヨタ側のアーチオンに対する議決権を下げる対応のほか、人事交流を含めて情報共有を制限する。
■スカニアエンジン搭載バスの生産も
今後、特に大きな対応が必要になるのが、スカニアの市場参入と成長を促すための施策だ。公取委の調査によると、スカニア製トラックは性能や品質面で国内ユーザーからも一定の評価を受けているが、「部品交換やメンテナンス等のアフターサービスへの不安がボトルネックになっている」(公取委の口ノ町達朗上席企業結合調査官)という。さらに(4)の大型観光バスでは、日野といすゞの共同出資会社ジェイ・バスで、スカニア製エンジンを搭載したスカニアブランド向けバスを製造する計画も明らかにされた。
日野は過去にスカニアと提携し、2003年4月から11年5月まで、スカニアの大型トラクターを累計約400台販売した経緯がある。今回、約15年ぶりに販売を支援することになる。
(2)(5)での日野と三菱ふそう間の情報遮断、(3)(6)でのトヨタと人事交流の制限による影響も懸念される。公取委は「基本的には販売面での情報が対象で、技術開発を制限することはない」(口ノ町上席企業結合調査官)とし、競争力強化の弊害にはならないと説明する。ただ、全国の販売網整備や、現場スタッフの確保といった共通課題に対し、二人三脚で解決することは難しくなりそうだ。
■いすゞのUD子会社化とは「前提が異なる」
三菱ふそうは「本件とは無関係」としながらも、(2)中型トラックと(5)大型路線バスのディーゼルエンジン搭載車の生産を今後終了することも明らかになった。ただ、三菱ふそうによると、今年後半に鴻海精密工業と立ち上げるバス事業会社では、ディーゼルエンジンの大型路線バスの復活も検討していくという。
競合のいすゞは先んじて21年4月にUDトラックスを完全子会社化している。公取委は「競争者の数だけで判断していることではない」と前置きをした上で、「4社から3社への統合と、3社から2社では前提となる市場構造が異なる。競争圧力が働くかどうかを見ている」(口ノ町上席企業結合調査官)と判断理由を説明する。
日野と三菱ふそうは経営統合の大義に、巨額の開発費が必要な脱炭素技術やソフトウエア・デファインド・ビークル(SDV)への対応、さらに中国新興メーカーなどに対する競争力強化を掲げる。ただ、プレーヤーが限られる国内市場では、スカニアを第三勢力として育てる施策などが求められる事態となった。暮らしに欠かせない物流の維持・強化に向けて、製品開発と販売を切り分け、共通プラットフォーム車の開発といった「上流」でどれだけシナジーを生み出せるかが問われそうだ。
| 対象者 | 自動車業界 |
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日刊自動車新聞2月27日掲載











