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2026年2月24日

連載「変流 自動車メーカー決算を読む」(4)問われるEV戦略

自動車メーカーの2025年4~12月の決算では、電動化戦略の違いが結果を大きく左右した。苦境が鮮明となったのがホンダだ。積極的に投資してきた電気自動車(EV)の普及シナリオが狂い、開発中止などの損失費用を営業利益ベースで2671億円計上した。一方、EV投資を慎重に進めつつも強みを持つハイブリッド車(HV)の投入を強化してきたトヨタ自動車は、関税影響がありながらも3兆円超の純利益を確保した。国内メーカーの多くが主力市場に据える米国ではEVへの逆風はさらに強まっており、戦略の見直しは急務となる。

■EV損失が顕在化

「足元の市場環境を踏まえ、電動化戦略の見直しをしていかないといけない」。ホンダの決算会見で貝原典也副社長は厳しい表情を浮かべた。4~12月期の四輪事業の営業損益はEVに関連する損失が大きく、1664億円の赤字となった。

米国ではトランプ政権がEV購入補助金を25年9月末で打ち切り、燃費基準達成に向けたEV普及促進策の撤廃も決めた。こうした中、ホンダは自社開発を進めてきた大型EVの投入を中止し、25年4~12月期に開発費の損失を計上した。ゼネラル・モーターズ(GM)と共同開発した「プロローグ」の販売不振に伴う減損損失も織り込んだ。26年3月期では損失が約7000億円に及ぶ見通しだ。

米国のEV政策の見直しは、スバルや三菱自動車などの決算にも影響を及ぼした。燃費基準を満たせない場合に企業が罰金を回避するために購入する「環境クレジット」について、米国で環境規制が緩和されることを踏まえ、同クレジットの評価を見直し損失を計上した。スバルは、環境規制費用として来期以降に損失計上の可能性あるものも含めて26年3月期に310億円を損失計上した。

■米国はHVシフト

各社は米国でのEV減速を横目にHVに軸足を移す。トヨタは4~12月期の米国のHV販売が前年同期比15.1%増となり、同市場をけん引した。トヨタは今後5年間で米国に最大100億ドル投資する計画で、そのうち約9億ドルを、HVを生産する5工場に投じる。

ホンダも電動化戦略の見直しでHV強化に乗り出す。米国で需要が高い大型SUVへの搭載を想定したハイブリッドシステムを開発しており、29年までに実用化する計画だ。

米国販売が7割近くを占めるスバルは、2月からインディアナ工場でHVの生産を開始した。これにより米国向けの「フォレスター」はすべて現地生産になる。

■中国はEVテコ入れが必至

世界的に需要が停滞するEVだが、中国市場では比較的堅調だ。ただ、中国では機能面と価格面で現地メーカーのEVは競争力が高く、海外メーカーは苦戦を強いられている。トヨタや日産自動車は開発や調達の現地化を進めて巻き返しを図るが、ホンダは中国専用EV「イエ」シリーズの投入計画を見直すなど後れをとっている。

ホンダは米中戦略がことごとく裏目に出ており、戦略の転換が急務だ。4~12月期決算発表の同日、四輪開発機能を本社から分離し、子会社の本田技術研究所に統合すると発表した。独創的で競争力の高い商品開発環境を整え、「ホンダらしさ」を取り戻す狙いだ。

■求められる柔軟性

米国でEVの車種数を増やすスバルの江森朋晃専務執行役員は「これまで環境規制に頼る販売だったが、今は市場でEVがどう受け入れられか。どう伸びるかあまり決めず柔軟に対応する」と話す。パワートレインを左右する環境政策は、時の政権や安全保障の影響で変化する。長期的な視点が求められる自動車メーカーの投資は常にリスクと隣り合わせだ。広く世界に事業を展開する国内自動車メーカーには、多様性と柔軟性を持った事業戦略が求められる。

日刊自動車新聞2月24日掲載