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2026年2月16日

スズキ初のEV「eビターラ」、寒冷地でも支持 4WDのコンパクトEVで新たな市場開拓

 スズキが1月に国内販売を開始した初の電気自動車(EV)「eビターラ」。コンパクトSUVでありながら雪道にも対応できる四輪駆動(4WD)仕様を設定した点が支持されており、販売が大都市圏に集中しがちなEVながら、地域を問わず受注の獲得に成功した。スズキではEV普及に向けた販売現場の体制整備も進めており、今後のさらなる拡販につなげたい考えだ。

 
        スズキ初のEV「eビターラ」

■寒冷地でも支持、本格四駆EVが武器
1月16日に発売したeビターラは、具体的な販売台数は非公表としながらも、「想定を上回る立ち上がり」(大前陽平チーフエンジニア)といい、滑り出しは順調のようだ。4WDを用意したコンパクトSUVのほか、質感を高めた内装や、ガソリン車からの乗り換えでも違和感の少ない走行特性が評価されているという。

 

 国内でのEV普及は、都市部を中心に進んでいる。次世代自動車振興センターによる2024年度のEV補助金交付台数を見ると、東京都が8312台、愛知県が3516台、神奈川県が3322台、大阪府が3099台と、大都市圏が上位を占める。一方、eビターラは都市部だけでなく、降雪地域からの引き合いも強いという。大前チーフエンジニアは「特定地域に偏らず寒冷地を含め幅広いエリアで受注している」と説明する。

 EVの4WD車としては日産自動車の「アリア」やトヨタ自動車の「bZ4X」などがある。ただし全長は、アリアがeビターラより620ミリメートル、bZ4Xが415ミリメートル長く、サイズは大きく異なる。競合が少ないコンパクトEVで4WDという独自のポジションが、一定の需要を取り込んでいるとみられる。

 開発に当たっては、既存のスズキユーザーの乗り換えに主眼を置いた。EVの特徴でもある反応の良い鋭い加速感はあえて抑制して滑らかな発進をしやすくするなど、ガソリン車ユーザーでも自然に運転できる走行感覚を重視。日常使いでの扱いやすさを優先した。

 もっとも、この点は評価と同時に、課題にもつながっている。海外メーカーのEVに親しんできたユーザーからは「もの足りない」といった声があるという。EVの「アーリーアダプター層」が買い替え期を迎える中、新規顧客の獲得には、加速性能や内装の先進性といったEVらしさの訴求も求められそうだ。四輪電動電池設計部の林義裕主幹は「市場からの声を次の開発に生かしたい」と話す。

■販売会社の不安を払しょくできる体制整備
 EV販売を見据えた営業現場の体制整備も進めてきた。eビターラの投入に先立ち、販売会社向けにEV専用の研修を実施。独自のeラーニング教材を用意するなど、販売スタッフがEVの特性や顧客対応を理解するための環境づくりを進めた。

 また、各販売会社には、EVに関する問い合わせや現場の課題などを集約する責任者を配置した。さらに、メーカーと販売会社がEVに関する知見や課題を共有するコミュニティーサイトも立ち上げ、疑問点を迅速に解消できる仕組みを構築した。

 EVは、商品特性や販売プロセスなどガソリン車と異なることも多いだけに、販売現場の不安をいかに抑えられるかが拡販の鍵となる。スズキはこうした販売基盤の整備を通じて、EVを着実に浸透させていく考えだ。

対象者 自動車業界

日刊自動車新聞2月16日掲載