2026年2月9日
トヨタ、近健太新体制「稼ぐ力」てこ入れ 環境激変で佐藤氏は団体活動に注力 「会長は人事決定に関与せず」

「フォーメーションチェンジ」で稼ぐ力と自動車産業の
競争力向上を目指す(6日の会見)
トヨタ自動車の社長が3年ぶりに交代する。経理畑の近健太執行役員CFO(最高財務責任者)がトップに就く人事は、トランプ関税など事業環境の変化にも柔軟に対応するための“稼ぐ力”をこれまで以上に高める狙いがある。副会長に就く佐藤恒治社長は日本自動車工業会(自工会)などの公職に注力し、自動車産業の国際競争力向上へ連携を強化していく。14年間社長を務めた豊田章男会長と比べてトップ在任の期間が大幅に短くなったのは、佐藤社長が打ち出した「チーム経営」が根付いたためだ。目まぐるしく変化する事業環境に対し、機動的に対応するトヨタの経営体制ゆえの決定と言える。
「損益分岐台数を引き下げて、悪い時に踏ん張れる構造をつくらないといけない」―。2月6日にトヨタ東京本社(東京都文京区)で開いた会見で近氏は力を込めた。足元ではハイブリッド車(HV)の販売が好調で売り上げを伸ばすが、一方でトランプ関税や仕入れ先への還元が利益を圧迫する。収益力と商品力の高さは競合他社を一歩も二歩もリードするが、近新体制の下、もう一段階“稼ぐ力”を引き上げる考えだ。
収益力向上には、先進技術開発を担うトヨタ子会社のウーブン・バイ・トヨタ(WBT)代表取締役CFOの経験を生かす。外から見たトヨタの課題の一つとして近氏は「機能軸で『これが良い』を積み重ね過ぎた。そこに横串を刺す」と指摘する。地域軸や商品軸で細分化してきたものを、事業全体を見渡して合理化できる部分を最適化していく考えだ。
佐藤氏は豊田氏の後任として23年4月に社長に就いた。着任当時、佐藤氏は53歳で、豊田氏との年齢差は13歳。エンジニア出身の佐藤氏をトップに登用し、電動化や自動化といった商品を軸にした経営を推進してきた。社長就任会見では26年に電気自動車(EV)販売を年間150万台とする方針を示したが、EV需要が伸び悩み、現時点では計画を見直している。
事業環境の変化とともに、佐藤氏に求められる役割も変化してきた。トランプ関税に加え中国のサプライチェーン(供給網)リスクなど、トヨタが直面する課題は個社の問題にとどまらなくなってきた。難局を乗り越えるにはトヨタが国内の自動車産業をリードし、連携を強化する必要性が高まってきた。
こうした中、佐藤氏は25年5月に日本経済団体連合会(経団連)副会長、26年1月に自工会会長に就任し、団体における役割が増えていった。佐藤氏は自工会会長就任後に「(業界の)協調領域をつくっていこうとした時に、果たして本当にトヨタの社長という肩書きはどうなのか」と漏らしていた。
社長交代の背景には「豊田綱領」に掲げられた「産業報国」の使命を果たす狙いもある。社長交代会見で佐藤氏は「国際競争力を守るため業界が一丸となって協調領域を具体化させ、日本の勝ち筋を見つける」と述べ、4月から団体活動に軸足を置く。
佐藤氏の社長任期は3年と、病気療養を理由に退任した、創業家出身の故豊田達郎氏(2年11カ月)に次ぐ短さだ。トップ人事については社外取締役が過半数を占める「役員人事案策定会議」(メンバーは3人)で決定する。創業家出身の豊田氏は「意思決定に関わっていない」(佐藤氏)という。
今年70歳になる豊田氏は、年頭の社内向けあいさつで「自身に残された時間を意識する歳になった」と話した。会長としてやることの一つに「人材育成」を掲げた。豊田氏はそれまでの人材育成によりチーム経営の形が見えたことで、佐藤氏にバトンを引き継いだ経緯がある。事業環境の変化の速さが、チームの「フォーメーション」をいち早く変えるトリガーとなった。
近氏も新体制で「チーム経営は変わることはない」と断言する。自動車産業の先行きは不透明感が漂い、中長期的な見通しが立てにくい。WBTで身に付けたスピード感を武器に、チームが一丸となって収益構造の改革を進めて、経営の柔軟性を高めていく考えだ。
| カテゴリー | 人事 |
|---|---|
| 対象者 | 自動車業界 |
日刊自動車新聞2月9日掲載











