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2026年2月5日

〈トップインタビュー2026〉日本自動車車体整備協同組合連合会、小倉龍一会長 引き取りや納車の費用は受益者負担で

日本自動車車体整備協同組合連合会(日車協連)にとって2025年は、損害保険大手4社と保険修理の工賃算出に用いる「指数対応単価」の見直しに向け、初の団体交渉を進めるなど大きな動きのある1年だった。独自の塗装工数の検証にも取り組んだ。一方、昨秋からは新たな団体交渉にも入るなど、26年も活発な動きが予測される。人手不足や新技術への対応など、車体整備事業者を取り巻く環境が変化する中、組合員各社をどのように導いていくのか、小倉龍一会長に聞いた。

―初の団体交渉を通じて感じたことは

「これまで無料でやっていた引き取りや納車、データの管理、洗車、車両の保管などを受益者負担で求めるべきということだ。今までは板金塗装(BP)の費用で何とかカバーしていたが、人材不足や諸費用の高騰などで、できる範囲を超えているところもある。組合員の中にはBP以外の作業にも時間を取られており、それに対する適切な費用を求める必要がある」

―大手損保と2回目の団体交渉が始まった

「25年11月から、本格的に行っている。主な要求は、(1)指数対応単価を24年度の合意よりも引き上げる(2)レンタカー代や引き取り・納車費用などBP以外の費用を認めてもらう―の2点だ。交渉では互いに言いたいことを言い合えている。ただ、損保会社に費用を請求する以上、直接持ち込まれた顧客にも請求しなければ整合性が取れない。ダブルスタンダードではいけない」

―初回の団体交渉を経て、組合員の指数対応単価は上がっているのか

「実質的に、値上げになったかどうかは微妙なところだ。そもそも指数対応単価は30年間で70円しか上がっていなかった。消費者物価指数を考慮すると、もっと高くなければいけない。しかし、それでも苦しいという声もある」

―塗装工数の検証の進ちょくは

「2月中に日車協連で報告会を行い、25年度内に取りまとめる。その後、総会までに一定の成果を発表できる見込みだ。もちろん今年度だけで終わる話ではなく、実際の運用を見据えている。絵に描いた餅で終わってはいけない」

―先進安全装備が装着された車のBPが増えている

「関連する知識の習得や、スキャンツール(外部故障診断機)が必要だが、対応している組合員が多い。ただ、電子制御装置整備の認証資格を持っていても、エーミング(機能調整)は外注する組合員が多い。また、センサーが取り付けられたバンパーを補修する場合、メーカーによって『補修せずに交換する』『補修は可能だが、塗装は決められた膜厚で行うこと』など要領が異なる。しかし、顧客から直接請け負った場合は、交換が必要でも費用を抑えるために修理を希望するケースもある。塗装によってセンサーが正常に作動しないリスクを伝えても、わずかな損傷でバンパー交換と言われ、料金に納得しない人がいる。対応が難しい」

―26年度の高度化車体整備技能講習のテーマは

「板金基礎編を行う。板金の基礎を新しく入ってきた人に教えるには、十分な基礎知識を理解していないといけない。講習ではへこみの直し方や鉄板に関する知識、作業によって金属が伸びたり縮んだりする原理などを教える。講習で改めて学んだことを、各社で教える時に披露してほしい」

―人材不足の問題は深刻だ

「損保会社との団体交渉の根本は、人材確保にある。整備学校では、高校生や中学生にアピールしないと学生が確保できないと聞く。それはわれわれも同じだ。整備の仕事が社会的インフラを支えることを訴えても、保護者がネックになることもある。整備の仕事へのネガティブなイメージを払拭(ふっしょく)しないといけない」

「車体整備業界の平均年収は他の業種より低い。これを是正し、なりわいとして成り立つ業種でないといけない。車体整備業界には規模が大きい事業者は少ない。日車協連だけではなく、業界全体で何らかの対策を打ち出す必要がある。26年度はこの点について踏み込んでいきたい」

〈プロフィル〉おぐら・りゅういち 1987年日本大学理工学部卒。高校の物理教師を経て、小倉鈑金塗装工業に入社。2000年社長。06年小倉自動車社長に就任。10年神奈川県自動車車体整備協同組合理事長、15年から現職。1963年7月生まれ、62歳。神奈川県出身。

(小野 大佐)

対象者 自動車業界

日刊自動車新聞2月5日掲載