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2026年2月4日

日野自動車の小木曽聡社長に聞く アーチオンCTOとして「チームでなければ競争に勝てない」

日野自動車の小木曽聡社長は、2021年の社長就任から5年間、「認証不正」と「経営統合」に対峙し、この二つの課題を前進させるために奔走し続けてきた。4月の三菱ふそうトラック・バスとの経営統合を前に、企業風土改革に向けたこれまでの取り組みと進ちょく、統合会社「アーチオン」の最高技術責任者(CTO)に就くにあたり意気込みを聞いた。

―社長就任1年目から認証不正の対応に追われた

「日野に来たのが21年の2月、6月の総会で社長に就いた。すでに北米向けのエンジンで排出ガス認証に関する調査が始まっている状況で『国内でも調べた方が良い』と。自身がトヨタ自動車でハイブリッド車(HV)を開発していたバックグラウンドがあり、エンジンと電動部品を組み合わせた際の認証や、そのための性能保証などをどうしたら良いか、という仕事をしていた。こうした経験値を持った人は日野の役員の中にもいなかった。調査を進めていくと『課題が多いかもしれない』となり、不正を公表した」

―不正が行われた背景として企業風土が指摘された

「組織風土的な問題、経営の問題、実際に不正作業した人の問題もあるが、やはりそれを防止できなかった経営層の責任も重い。私が日野に来てからずっと株価が落ちて、無配が続いている。(ステークホルダーには)心配をかけている。また、離職率は残念ながら不正公表前の3倍程度だ。社員に向き合い、一つひとつ正してきた。監督省庁にもすべてオープンに伝えて対応して、四半期ごとの報告を6回やった。米国でも同じことをやってきた。米国は企業犯罪を裁くという枠組みがしっかりされているので大変厳しいところもあり、制裁金も非常に高額で事業への影響も大きかった。そういう立て直しを従業員全体でやってきた」

―再発防止に取り組む最中、三菱ふそうとの経営統合を発表した

「4社で商用車の未来をつくるというベクトルは合っていたので検討は進んでいった。米国の集団訴訟などいろいろあったが、現時点ではすべて解決している。昨年10月に公表したアーチオンとして、シナジーを得られるようになるので一生懸命にやっていく」

―不正影響が解消し、経営統合に向けてようやく前進できるようになる

「会社の存続が危ぶまれる中で社員を中心に非常に努力をしてきたことと、もう一つは今回、経営統合とセットでトヨタに増資をしてもらうが、これらの親会社のサポートに感謝している。それがあってようやく再スタートを切れる。厳しい時でも事業を続けてもらった販売会社の人たちにも感謝をしている」

―日野の原点として「HINOウェイ」をまとめた

「22年秋くらいから作りはじめた。『誠実』『貢献』『共感』の三つの改革をアピールし始めたのはさかのぼって6月くらい。いろいろな場で浸透活動は続けているが、まだばらつきはある。コンプライアンスはエンジン認証について集中的にやっているが、会社全体で見ると法令順守のさまざまなルールについては時々ミスもあるので、終わりはないと思っている。4月に社長に就くサティヤカーム・アーリャも『HINOウェイを大切にして続けていきたい』と言ってくれている」

―認証不正は収益面のインパクトも大きかった

「米国のペナルティーはものすごく高額になることが予想されていたので、いかにつじつまを合わせて会社を存続させていくかをずっとやってきた。増資と羽村工場(の譲渡)の件をトヨタに判断してもらったことで何とかつながった。一方で日野は選択と集中を進め、中国事業を撤退したりいろいろなところで取捨選択をしてきた。足元ではトランプ関税に加えて、メイン市場のタイとインドネシアの経済状況があまり良くないので、世界販売台数はこれまで約20万台規模だったものが13万台となっている。円安の追い風もあって上期の営業利益率は5%に近いが、損益分岐点にはアジャストできている。株主に対しては、認証不正問題でざっくりと6800億円ロストしていると伝えている。日野工場は北関東に移って跡地を売却し、モータープールはトヨタ生産方式的に物の流れを整理して、日高のモータープールを整理整頓して売却した。土地の売却以上に在庫を最適化することでキャッシュフローも良くなり、稼ぐという意味で少し健全化を図った」

―羽村工場を譲渡した後の小型トラックについて

「今はトヨタ『ランドクルーザー250』などを生産し、そこの役割は大きい。私自身がトヨタの『CVカンパニー』のプレジデントとしてそこの製品群をやっていたこともあるが、フレーム車はもっと進化していくので、日野の工場というよりは今後の活用方法をトヨタに見てもらうのが良いということで、いろいろ相談させてもらった。(羽村工場で生産する)小型トラックは日野の開発設計車であり、今後は日野からトヨタ自動車羽村への生産委託になる。将来的にどこで何をつくるかはアーチオンとしていろいろ考えていくことになる。ものづくりとして地域性は大事なので(日野の古河工場など)関東エリアで連携することはきっとある」

―30年までに営業利益率を8%とする計画だ

「例えばエンジン、ミッションのバリエーションは顧客とか地域からの要望があると、その都度新しいバリエーションをつくってきた。1回投資したらそれぞれのところに人がいるし、老朽化更新も必要になるし、それぞれに規制対応でまた開発しなければいけない。経営統合する前の時点で、日野としても27~29年に入れる商品はグローバルでどことどこが一緒にできるのか、急にできない部分もあるがそれを寄せていくことによって細かいバリエーションまで簡単に半分にすることができる」

―新会社ではCTOに就く

「将来の商用車をつくっていくには技術は重要だ。CTOとして頑張っていきたい。『統合プラットフォーム』を開発していくことは事業戦略そのもの。アーチオングループ全体でやっていくが、結構なところで自分もまとめていかなければいけない。アーチオンのスケールだといろいろな会社の人の力を借りたい。チームづくりをやっていかないと競争に勝っていけない」

―バリューチェーンは日本の強みだ。次世代プラットフォームは整備性をどう考えるか

「まだ話をできることはないが、日野ブランドの中でサービス性、メンテナンス性、突発的な不具合みたいなものはもっと下げていく。1~2年先に出す車はふそうとの統合関係なく、やれることを順次入れていく。あとはソフトウエア・デファインド・ビークル(SDV)はソフトウエアの書き換えなど、できる範囲が着実に増えてくるのでそこは大事にしていきたい」

―販売店の人手不足をどう見るか

「日野ブランドとふそうブランドは別のものとして大切にして、ブランドが違う中で競争していく。販売店のメカニック確保については、職場環境や賃金、そしてブランドに誇りが持てるかが大事だと思っている。日野はダカールラリー参戦をずっと継続していて、直近3年ぐらいは販売店からサービスメカニックとして来てもらっていて、これがすごくモチベートするようだ。現時点でいすゞ自動車とUDトラックス陣営が少し優勢だ。日野の顧客の満足度は高いが、台数としては負けている。決して台数だけを追い求めるわけではないが、より良い商品が良品廉価で提供できれば、販売店の人はメカニックも含めて元気になるんじゃないかと思っている」

対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞 2月4日掲載