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2026年1月5日

ヤマハ発動機、水素エンジンの開発着々 脱炭素・コスト・操る楽しさ モーターとエンジンで実現へ

 ヤマハ発動機が水素エンジンの開発を着々と進める。コミューター用の二輪車を試走させるほか、ゴルフカートや四輪バギーの開発もほぼ終えた。エンジンは耐久性に優れ、既存のサプライチェーン(供給網)やアフターサービス網を生かせる利点もある。同社は電動バイクを含め、市場や用途ごとにパワートレインを使い分けるマルチパスウェイ(全方位)戦略を採る。脱炭素やコスト、操る楽しさなどの両立を「モーター」と「エンジン」で目指していく。

   
     自社研究開発棟に水素エンジン用のベンチを設置  

   
    ゴルフカートや四輪バギー、船舶への搭載も視野に入れる

 静岡県磐田市の研究開発拠点。専用の評価ベンチで水素エンジンがうなりを上げて回る。水素は燃やしても二酸化炭素(CO2)は出ないが、微量の窒素酸化物(NOx)が出る。燃焼速度が早いためエンジン破壊につながる異常燃焼(ノッキング)も起こしやすい。評価ベンチでは、エンジンの燃焼状態や耐久性などを精密に計測し、開発に反映させている。370キロワット(約503馬力)、470キロワット(約639馬力)、700キロワット(約952馬力)と、エンジン出力に合わせて3基を用意する。水素エンジン専用の評価ベンチは国内に2カ所しかなく、協業先のトヨタ自動車も同施設を利用しているという。

 開発した水素エンジン二輪車「H2バディポーターコンセプト」は、デリバリーなどを想定したコミューターだ。単気筒155ccガソリンエンジンを改良し、シリンダーヘッドはポート噴射から直噴方式に変更、点火プラグを最適化したほか、鋼材の強度が低下する水素脆化(ぜいか)対策も施した。

 小型の高圧水素タンクはトヨタ製だ。保安基準もにらみ、容量23リットル以下にして設計し、満充てん時の航続可能距離では実測値で100キロメートル以上を確保した。タンクはエンジン上部、荷台の下に搭載することで重心を下げ、操縦安定性と航続距離を両立させた。設楽元文社長は「製品化も近いうちにできる」と自信を示す。水素エンジンを搭載したゴルフカートや四輪バギーも開発済みで、水素タンクを設置するスペースに余裕がある船舶への搭載にも意欲を見せる。

 ただ、今は法規制が追いついていない。例えば、樹脂と炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を組み合わせた水素タンクは四輪車への搭載は認められているものの、二輪向けは規則そのものがない。また、一般的な水素ステーションの70メガパスカル で充てんする場合、最低でも2キログラム(50リットル)以上の容量が必要で、二輪車のタンク容量を23リットル以下と規定する基準と整合していない問題もある。日本政府もマルチパスウェイ戦略でメーカーと歩調を合わせる中、多様なパワートレインをにらんだ制度や規制の見直しも課題になりそうだ。

対象者 自動車業界

日刊自動車新聞1月5日掲載