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2025年12月24日

政府、AIの〝勝ち筋〟示す 開発や利用の基本計画を閣議決定 2026年夏にはロードマップも

 政府は23日、人工知能(AI)の開発や利用に関する基本計画を閣議決定した。5月に成立したAI法(人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律)に基づく初の計画だ。AIで他国に出遅れた分「信頼できるAI」や「世界で最もAIを開発・活用しやすい環境」で巻き返す。日本の〝勝ち筋〟として、自動運転技術や、ロボットと組み合わせた「フィジカルAI」などを位置付けた。来夏には投資目標などを盛り込んだロードマップ(工程表)をまとめ、実行に移す。

AI活用の自動運転も推進(イメージ)

 AIの開発や投資では、オープンAIへの投資を拡大しているエヌビディア、アマゾンなどを抱える米国や、関連産業が26兆円規模に成長した中国などが先行する。基本計画は「主要国はもちろん、経済規模が小さい国にも後塵(こうじん)を拝し、出遅れが年々顕著になっている」と指摘し、日本が強みとする質の高いデータや高品質な通信環境を生かして「反転攻勢に出る」と強調。その上で3つの「原則」と4つの「基本方針」を掲げた。

 原則の1つ目は「イノベーション促進とリスク対応の両立」だ。「危機管理投資」と「成長投資」の中核として、AI戦略を一段と進化させる。2つ目は「アジャイル(迅速)な対応」で、PDCA(計画・実行・評価・改善)サイクルを徹底する。3つ目は国内だけでなく、対外政策を組み合わせた「内外一体での政策推進」を掲げた。

 一方の基本方針では、AIを「使う」「創る」「信頼性を高める」「協働する」とした。

 「使う」では政府や地方自治体でAIを積極導入するほか、組織を超えたデータの共有及び官民連携によるデータの利活用を促し、民間にもAIの導入機運を広げていく。物流や公共交通などでの実用化を急ぐほか、AIを用いた新産業の創出に向け、スタートアップなどを支援する。「創る」では、AI開発力を強化するため、基盤システムやデータセンターなどを国内に構築する。自動運転や自律型ロボットの開発を後押ししたり、製造業などで海外展開も意識したAI事業のモデルを模索したりする。

 「信頼性」の確保に向けては、ガバナンス(統治)を強化する。AI関連のサイバー事案の対処能力向上に取り組むほか、開発・利活用における適正性の確保を企業に求めていく。AIの安全性を評価する政府機関「AIセーフティ・インスティテュート(AISI)」の人員も増やす。

 人とAIの「協働」では、雇用への影響について、代替性と補完性の両面から調査 し、対応策を検討する。AIの利活用における事故や損害が発生した場合の民事責任の所在や範囲についても検討を急ぐ。高度自動運転でも、交通事故時の責任の所在や保険適用の範囲などが課題となっており、法制度や明確な判断基準を整えていく。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞 12月24日掲載