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2025年12月18日

EU方針転換、2035年の内燃機関車禁止撤回 なお厳しい条件付き、欧州復権は不透明

 欧州連合(EU)欧州委員会は、2035年に内燃機関車の新車販売を禁じる方針を撤回すると発表した。合成燃料(eフューエル)に加え、欧州製の低炭素鋼やバイオ燃料を使用などを条件に、ハイブリッド車(HV)などを含む内燃機関車の販売を容認する意向だ。ディーゼル不正を契機に〝EV(電気自動車)一本足打法〟に賭けたが、思うように販売が伸びす、リストラに追われる域内の自動車・部品メーカーから規制の見直しを求める声があがっていた。もっとも、今回の方針転換にも「前提条件が厳しい」と不満の声が出ている。

 欧州メーカーの競争力強化と市場の活性化を目指し、欧州委が16日、「自動車政策パッケージ」として発表した。

 内燃機関車は23年春時点でeフューエルを用いる場合に限り販売が認められていた。今回は、製造時の二酸化炭素(CO2)排出を抑えた「グリーン鉄」の使用やバイオマス(生物由来)燃料の使用も条件として認めた。35年のCO2排出削減目標は、従来の21年比100%から同90%となる。

 ただ、50年のカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)目標は維持し、長期的にEVを普及させる。欧州域内の電池産業に18億ユーロ(約3300億円)を支援し、うち15億ユーロ(約2700億円)は電池セルメーカーを対象に、無利子の融資とする。合わせて車両価格が手頃な小型EV(全長4.2メートル以下)の新車両規格を導入する。セカンドカー需要などを刺激するとともに、対象を明確化することで各国の補助金の導入も促していく。中型バンなどの商用車も30年以降、大企業の登録台数の一定割合をゼロエミッション車(ZEV)か低排出車にするよう、EU加盟国に求める方針だ。

 10年代後半に発覚したディーゼル車の排ガス不正問題を経て、欧州では官民で自動車産業のEVシフトに舵を切った。しかし、欧州のEV比率は18.9%(25年10月時点)にとどまる。特にEV購入補助金が23年末に廃止されたドイツでは、政府とメーカーが歩調を合わせ、35年の内燃機関車販売規制の撤廃を求めていた。今回の動きを受け、30年に純内燃機関車の販売を規制する英国などにも修正の動きが波及する可能性もある。

 一方、ドイツ自動車工業会などから、域内製の低炭素鋼やバイオ燃料の使用比率を高めることが条件となっていることを懸念する声も出ている。欧州自動車産業の復権につながるかは不透明だ。



自動車政策パッケージを発表する欧州委員会(16日)

 

対象者 自動車業界

日刊自動車新聞12月18日掲載