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2025年12月11日

〈岐路に立つ自動車税制〉古賀友一郎参議院議員(自民党)に聞く ベースの税制と一時的な措置、バランスとって使い分け

 経済産業副大臣として4月に自動車工場を視察し、米国の関税政策で影響を受ける現場の声をいち早く聞き取った。自動車関係諸税については「財源確保と政策誘導の2つの機能を反映しながら、現実問題を加味してバランスをとるべきだ」と述べ、「ベースの税制と一時的な措置を使い分けることになるのでは」と見立てた。大詰めを迎える税制改正について、古賀友一郎議員に聞いた。

 ―足元の自動車産業をどう見ているか

 「日本で生産する車の約15%が米国向けに輸出されており、影響の広がりを憂慮している。『国内市場に期待したい』との声が出るのは当然だ。稼ぎ頭である自動車産業の今後次第では、日本経済が大きく変わることもあり得る。税制改正の議論では、業界の危機感をしっかり受け止めながら進める必要がある」

 ―2024年末に公表した与党税制改正大綱からの状況変化をどう織り込むか

 「自動車関係諸税には2つの機能がある。1つは財源を確保する機能、もう1つは政策を誘導する機能だ。両方を発動するにあたり、杓子定規にやっていくと支障が生じる場面が出てくる。米国関税政策や物価高などの現実問題を加味してバランスをとるべきだ。どこを強調するかは論者によって異なるが、ベースの税制と一時的な措置を使い分けることになるのではないか」

 ―電気自動車(EV)への課税はどうあるべきか

 「財源確保の納得性の観点から言うと、重いEVに乗っている人はそれだけ道路を傷めているから『税を納めていただいてしかるべき』というロジックになる。一方で、政策的には脱炭素車であるEVを育てる税制に合理性がある。もちろんEVも育成対象の一つだが、個人的にはEVは終着点ではないと考える。燃料電池車(FCV)や水素エンジンなど、日本の強みを発揮できる道筋へ誘導していくのがあるべき姿だ」

 ―地方では公共交通機関のドライバー不足が深刻だ。自動運転化も期待される中、必要な税体系とは

 「まさに納得性が問題になるところだ。直接恩恵を受ける人に負担していただくのが理解を得やすい。例えば自動運転サービスが普及することで、病院や買い物に行けるようになる高齢者などの利用者だ。ただ、高齢者が安心して生活できる地域をつくっていくことで、さらに受益者が広がることも考えられる。今後のポイントになる」

 ―いわゆる走行距離課税への考えは

 「財源確保機能を強調しすぎると『取れるところから取る』発想になりがちだが、納得性を損ない、税の信頼を失う危険性もある。走るほど税金を取られるということは、移動を抑制する方向に作用する。慎重に考えるべきだろう。『車がなくては生活できない地方の事情を分かっていない』との批判もままある」

 ―水素社会の実現へ、国が見通しを示し、より戦略的に推進すべきとの考えを示す

 「日本経済最大の課題は、民間需要をどう生み出すかということだ。いくら規制緩和や減税を行っても、回収の見込みがなければ企業は投資しない。ただでさえ人口が減少する社会で、昔のような旺盛な需要は出てこない。そこで水素エネルギーへの置き換えを訴えている。エネルギーが変われば、すべての財やサービスが変わる。大企業にとどまらず中小企業や地方の企業にも恩恵があり、収益を賃上げの原資にできる。過去にもエネルギーの主役が変わる時代に経済が伸びた。水素時代の到来は自動車産業の未来につながる」

 〈プロフィル〉こが・ゆういちろう 1991年東京大学法学部卒業後、自治省(現総務省)入省。長崎市副市長などを経て、2013年参議院初当選。参議院内閣委員長や経済産業副大臣を務め、現在は自由民主党政務調査会会長代理など。1967年11月生まれ、58歳。思い入れのある車はトヨタ自動車の「ソアラ」。学生時代に魅了され、入省5年目頃の和歌山市役所出向時代に中古で手に入れた。

(堀 友香)

対象者 自動車業界

日刊自動車新聞12月11日掲載