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2025年12月10日

中小受託取引適正化法、2026年1月施行 「一方的な代金決定」禁止 価格転嫁の定着が焦点に

 「中小受託取引適正化法(取適法)」が2026年1月1日に施行される。従来の下請代金支払遅延等防止法(下請法)が取適法に変わるのに伴い、「協議に応じない一方的な代金決定」が禁止事項に追加されるなどし、適用対象も拡大となる。中小企業庁と公正取引委員会は業界団体に新ルールへの対応を要請するなど周知に努めている。

 今回の法改正は、労務費などのコストが上昇する中、中小企業をはじめとする事業者が賃上げの原資を確保し、サプライチェーン(供給網)全体で価格転嫁を定着させることを目的に行われた。

 そのため禁止行為の11類型の1つに「協議に応じない一方的な代金決定」を追加した。受注側の価格協議の求めに応じず一方的に代金を決定することが禁止された。協議を拒む場合だけでなく、協議の求めを無視したり、繰り返し先延ばしにして協議を難しくしたりするなどの行為も含まれる。

 手形(一定期間後に現金化できる証書)による代金の支払いも禁止された。電子記録債権など他の支払手段を用いる場合にも、支払期日(発注した物品等を受領した日から起算し最長で60日以内)までに代金相当額の満額を得るのが困難なものは違反になる。これらは従来からの禁止行為の「支払遅延」に該当する。

 また、振込手数料を受注側に負担させ、製造委託などの代金から差し引くことは禁止行為の「減額」に該当する。合意の有無は問わない。

 また、従来の下請法で使われていた親事業者・下請事業者という呼び方は委託事業者・中小受託事業者に変更する。上下関係を連想させない用語に変える。

 法律の適用基準も追加された。製造業の場合、従来は①発注側が資本金3億円超で受注額が同3億円以下②発注側が同1千万円超3億円以下で受注側が同1千万円以下、の取引に適用されている。そのため、資本金を意図的に操作し違反を逃れるなどの行為が可能だった。

 そこで新たに従業員基準を追加した。常時使用する従業員300人超の発注者から300人以下の受注者への取引にも適用できるようになった。立場の弱い物流事業者が「荷役」や「荷待ち」を無償で行わされる問題にも対応した。製造物の引き渡しなどに必要な、発荷主から運送事業者への「特定運送委託」も対象とした。

 省庁側の体制も強化した。企業などが取適法に違反した場合、公取委は従来どおり再発防止を勧告できるが、法改正により、すでに違反行為が是正された場合でも勧告できるよう規定が整備された。

 また、従来は事業を所管する省庁には調査権限のみが与えられていたが、所管省庁の主務大臣にも指導・助言の権限を与えた。

 足元では三菱ふそうトラック・バスやトヨタ自動車東日本、福岡ダイハツ、スズキ系の部品メーカー・スニックなどが下請法違反で勧告を受けた。法改正を機に長年の取引慣行を改め、取引段階の深くまで価格転嫁を浸透させられるかが焦点となる。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞 12月10日掲載