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2025年12月4日

連載「JAMA 大学キャンパス出張授業2025」スズキ、スズキの挑戦~生活に密着したインフラモビリティを目指して~

 自動車メーカーのトップや技術者が登壇する日本自動車工業会(片山正則会長)の「大学キャンパス出張授業」が今年もスタートした。2013年から開催している出張授業は今回で12回目となり、昨年までの累計参加者数は3万5千人にのぼる。自動車産業は自動車の枠組みを超えた多様な移動手段とサービスを包括した「モビリティ産業」へと変革しようとしている。従来の機械工学系にとどまらない多様な人材確保に向け、モビリティ産業の魅力をトップ自らが学生に語り掛ける。

 スズキの鈴木俊宏社長は、金沢大学角間キャンパス(金沢市角間町)で「スズキの挑戦~生活に密着したインフラモビリティを目指して~」をテーマに講演した。スズキの歴史やインド事業、次世代技術などを学生に語った。

 スズキで大きなウエートを占めるインド事業。世界販売におけるインド比率は半数を超える。鈴木社長は「インドの自動車の歴史はスズキの歴史と言っても過言ではない」と話した。現在は、30年度に年産400万台を目指し、生産体制を増強している。「こんなに新しい工場を造っている他社はない」(鈴木社長)と強調した。

 インドで取り組む牛ふん由来のバイオガス活用事業についても触れた。石油資源に恵まれないインドでは原油の輸入依存が課題の一つ。このため、インドに3億頭いると言われる牛のふん尿を用いて、エネルギーを〝地産地消〟することが、インドの経済発展にもつながると鈴木社長は解説した。また、30年度に向けて取り組む車両の軽量化技術や、次世代モビリティなどについても語った。

 鈴木社長は自身の大学時代を振り返り、「仲の良い友人が8人いた。ノートの貸し借りもよくしていた。ある課題では『このクラスで8人だけ間違っている』と教授に指摘されたこともある。数年前に集まったが、当時と変わらない雰囲気だった。学生時代の仲間は本当に一生の友だ。ぜひ良い友人をつくってください」と述べた。

 学生との主なやりとりは次の通り。

 ―新技術を採用する際、リスクもある。どのように最終決定しているのか

 「今回、スズキは電気自動車(EV)を発売した。これは本当にギャンブルだ。でも、やらなければ時代に追いついていけない。ギャンブルと言いながらも、会社の特性を生かせるチャンスでもある。スズキはEV最後発だが、時代に乗り遅れているかというと、私自身はまったくそう思わない。他社のEVを徹底的に研究したからだ。新しいことをやるのはみんな怖い。だから先行開発をやりながら技術を確認しているし、新技術を採用するか、社内でも侃々諤々(かんかんがくがく)の議論を重ねる。最終的には、私と周辺の役員らで意見交換をして決めている」

 ―社長として現場感覚を持つために意識していることは

 「生産では毎年、工場監査を実施している。国内5工場を回り、現場の意見を聞くことをやっている。あとは各部門に私が行き、従業員と会話する活動もある。今、企業風土を変えているところで〝風の流れ〟を社内でつくることを徹底している。こうした姿勢を私たち(経営幹部)自身が見せていかねばいけないと思う」

 ―自動運転はいつ実現できるか

 「非常に難しい。自動運転は車だけでなく、インフラも含めて取り組んでいくことが重要だ。自動運転で先を行く中国メーカーは24時間365日開発している。こういう企業と対抗していかねばいけない。1社では実現できない。スズキとしても普及に向けて着実に準備は進めている」

講演後もスズキ製品を囲みながら学生の質問に答えた

スズキの魅力を語る鈴木社長

対象者 自動車業界

日刊自動車新聞12月4日掲載