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2025年12月2日

〈岐路に立つ自動車税制〉世耕弘成衆議院議員(無所属、元経産相) 国内の販促につながる対応策を

 経済産業相時代には「自動車新時代戦略会議」を立ち上げたほか、日産自動車とルノーの経営統合問題などにも関わった。車体課税の改正議論では、米関税が自動車産業に深刻な影響を与えていることを踏まえ「国内販売の促進につながるような対応を取ることが必要だ」と語った。世耕弘成衆議院議員に聞いた。

 ―経産相経験者として、今の自動車産業をどう見ているか

 「次世代車の普及を見据えて立ち上げた自動車新時代戦略会議では、変化の波が来ても対応できるよう、電気自動車(EV)に偏らず、多様なパワートレインを取りそろえておこうと取り組んだ。当時と比べると、中国を筆頭に想定以上にEV化が進んだ。ただ、揺り戻しも起きており、各国・各自動車メーカーがEV目標を下方修正している。プラグインハイブリッド車(PHV)が注目されるなど、現実的な選択肢がされていると感じる」

 ―今年の車体課税議論で、ポイントはどこだと考えるか

 「トランプ関税で自動車メーカーの販売や業績に影響が出ている。自動車は日本の基幹産業だ。短期的には国内での販売促進につながるような対応策を取っていく必要がある。まずは取得時にかかる『環境性能割』の負担を軽減するべきだろう。環境性能割の廃止で、年間15万台くらいは販売台数を上乗せできるとの試算もあり、効果的だ。関税の影響を軽減する上でも、来年度から速やかに対応するべきだ」

 ―環境性能割をめぐっては総務省が「地方の税収減につながる」と反対する

 「消費税が10%の時代に、(二重課税の形で)環境性能割もかけるという税体系が本当に正しいのか議論が必要だ。限定的な停止か廃止かという議論もあるが、個人的には恒久的に廃止すべきだと考えている」

 ―今は税負担が軽いEVの課税の在り方についてもさまざまな意見がある

 「EVへの課税を単純に重くするのではなく、内燃機関車に課せられている税を軽減することで公平性を保つべきではないか」

 ―日本自動車工業会や経産省らは新保有税として、車重と環境性能を基準とした案を示している

 「今の税体系は複雑で分かりにくい。個人的には(基準を)重量で一本化した方が良いと考えている。走行時の道路への負荷を考慮すると、重量で判断するのが最も公平だ。もちろん環境性能を加味することも必要だが、基本的には一本化する方が課税根拠は明確だと思う」

 ―ガソリンにかかる旧暫定税率(当分の間税率)などの代替財源探しが始まっている

 「暫定税率の廃止で自動車ユーザーの負担を軽減したのに、その分を車体に課税しては意味がない。財源探しは別でやるべきだ。今は国税、地方税ともに空前の増収となっている。減収分を急いで埋めて、税収中立を図る必要はない。また、ガソリンが安くなれば移動や観光需要が増え、経済効果も出てくるはずだ。そういったことも踏まえ、時間をかけて中長期的に検討していくべきだ」

 ―地方では公共交通機関の衰退が深刻だ。移動手段をどう確保していくべきか

 「日本版ライドシェアなども始まっているが『ライドシェアの担い手がいない』というのが地方の現実だ。自動運転やMaaS(サービスとしてのモビリティ)をできる限り早く普及させる必要がある。将来予測から逆算して社会実装を進めることが重要であり、それを後押しするのがわれわれの役割だ」

 〈プロフィル〉せこう・ひろしげ 1986年早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、日本電信電話(現NTT)入社。98年参議院和歌山県選挙区補欠選挙に出馬し初当選。経産相、内閣府特命担当大臣、参議院自民党幹事長などを務めた後、24年に衆議院議員総選挙に当選。1962年11月生まれ、63歳。学生時代の愛車は両親から譲り受けたホンダ「アコード」。

日刊自動車新聞12月2日掲載