2025年11月25日
〈岐路に立つ自動車税制〉経産省の保有税案、自動車税と重量税を統合 車重0.5t刻み 燃費で増減 簡素化は前進も負担軽減は道半ば
経済産業省による新たな自動車(乗用車)の保有税案が明らかになった。パワートレインを問わず、車両重量と2030年度燃費基準の達成度合いで税額を決める。28年4月からの導入を目指す。増減税分を等しくする「税収中立」で制度を設計し、同省が廃止を求める「環境性能割」を除く現行水準(24年度当初で約4.6兆円)と同じ税収を見込む。車体課税の「簡素化」は前進するが「負担軽減」は道半ばだ。今後は政府・与党内の調整が円滑に進むのかや、負担軽減に向けて車両だけでなく、モビリティ産業の広がりに伴う受益分にどう課税するかの議論が焦点になりそうだ。
現行の車体課税は、取得(購入)時に消費税と自動車税(環境性能割)を支払い、毎春に自動車税(種別割)、車検(自動車検査)時に自動車重量税を支払う複雑な仕組み。このうち自動車税(種別割)と重量税を統合し、消費税と重複する自動車税(環境性能割)を廃止するのが経産省案だ。
電動化の進展で排気量をベースとした自動車税の公平性が保ちにくいため、新保有税は0.5トン刻みの車重で税額を決め、重いほど税金が上がるようにする。エコカーの普及を促すため、30年度燃費基準の達成度合いに応じ税額を増減させる。
ただ、減税と増税の割合を等しくし、税収に大きな影響が出ないよう設計する。この増減幅は定期的に見直す。燃料電池車(FCV)は、30年度燃費基準がないことや、普及途上であることを考慮して優遇する。
経産省案の新保有税でも登録車(排気量660cc超)と軽自動車の区分けは残す。規格上、車重のバラツキが少ない軽自動車は、燃費達成率だけで税額を増減させることを想定しており、現行制度と比べ負担額が大きく増えないよう調整する。
自動車税と重量税の統合は車体課税の簡素化につながるものの、課税時期や納税の仕組みが異なるため調整が要る。経産省としては車検時ではなく、自動車税に近い仕組みで新保有税を徴収することを念頭に置いているという。導入まで2年の猶予を設けているのは、制度変更やシステム改修などの時間を考慮しているためだ。
この間の2年は、現行のエコカー減税とグリーン化特例を延長しつつ、環境性能割を廃止して新車への買い替えを促し〝トランプ関税〟で苦境にある自動車産業を内需で下支えするよう求める。
経産省は〝保有から利用〟への変化やパーソナルモビリティの普及、データビジネスの拡大など、自動車関連産業の受益者が広がっていることから課税体系の見直しを提案している。中長期的な負担軽減に向けては、こうした議論の行方も注目される。
日刊自動車新聞11月25日掲載












