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2025年11月21日

自動車安全特別会計からの繰り入れ 6000億円一括返済へ、事故被害者らの不安解消に


ドライバーが支払った保険料による「自動車安全特別会計」から政府が一般会計に資金を流用し、なお6千億円弱が戻っていない問題で、高市早苗政権は残額を一括返済する方針を21日に閣議決定する見通し。同特会の資金は、交通事故で寝たきりになった人や、その家族を支える制度にも使われている。この制度の持続性が高まることで、治療ノウハウの蓄積や、事故被害者及び家族の不安感解消などにもつながりそうだ。


重度後遺障害者の治療と看護を行う「療護センター」(千葉県)

自動車安全特会は、2008年度に既存の特会を統合する形で発足した。自動車損害賠償責任(自賠責)保険料の一部や検査・登録手数料、積立金として管理している再保険料、過去の再保険料の運用益などが財源だ。使途として、ひき逃げや無保険車による事故被害の救済や、交通事故による重度後遺障害者の介護・専門医療施設の運営、ASV(先進安全自動車)の導入補助費用などがある。特に重度後遺障害者などを対象とした「被害者保護増進事業」は税金に頼らず、交通事故被害者を保護する世界的にも珍しい制度だ。

 こうした中、政府は1994年度と95年度の2年間、赤字国債の発行を抑制するため、自動車安全特会(当時は自賠責特会)から1兆1200億円もの金額を一般会計に繰り入れた。94年には、当時の藤井裕久大蔵相(現財務省)と伊藤茂運輸相(現国交省)が4年間で全額を繰り戻すことで合意したが、03年度までに6921億円しか返済されず、03年度以降、再び返済が停止。18年度から返済が再開されたが、5741億円(元本4848億円、利子相当額893億円)がいまだ戻っていない。国土交通省はこの間、積立金を切り崩しており、財源の枯渇が不安視されていた。23年には、保険料の一部として徴収する「賦課金」が増やされ、財源の安定に向けて一歩前進したが「本来はまず、流用分を返済すべき」との声が根強く、交通事故の被害者団体や日本自動車連盟(坂口正芳会長)、日本自動車会議所(豊田章男会長)らは「自動車損害賠償保障制度を考える会」などを通じ、これまでも政府に返済を強く訴えてきた。

 この現状を受け、国民民主党は自動車安全特会への全額繰り戻しを政府に要望。昨年12月に開かれた参議院本会議では、国民民主の浜口誠参院議員からの質問に対し、石破茂元首相が「着実に繰り戻しを進める」と答弁していた。

 今月19日には国会内で自民党の小林鷹之政調会長と国民民主の浜口誠政調会長が会談。小林政調会長は「25年度の補正予算で一般会計に繰り入れられている約5700億円を自動車安全特会に一括返還するよう調整している」と言明した。国民民主の玉木雄一郎代表は19日、X(旧ツイッター)に「事故に対する救済が万全になるだけでなく、財政が安定すれば、保険料の引き下げにもつながる」とコメントした。

 一括返済が実現すれば、自動車安全特会の資金が手厚くなり、事故被害支援制度の持続性が高まる。「療護センター」での看護を通じ、重度後遺障害者の治療ノウハウなども蓄積されつつある。「介護者なき後」への対応など、制度の充実がますます求められる中、一括返済は明るいニュースとなりそうだ。

対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞11月21日掲載