2025年11月13日
〈新車リポート〉日産「リーフ」 航続可能距離を最大702キロに延伸
日産自動車は電気自動車(EV)「リーフ」をフルモデルチェンジして10月17日から国内での受注を始めた。新型車はEV購入時の不安要素をなくすため、航続可能距離を最大702キロメートル(WLTCモード、国内仕様)に伸ばした。日産では新型リーフを、パワートレインに関係なく「次の主流になるクルマ」を目指して開発した。高い走行性能や利便性の向上を図り、ガソリン車ユーザーにもアピールしていく。
リーフの全面改良は8年ぶり。量産型EVの先駆けとなった初代リーフは2010年に市場投入した。リーフの累計販売台数は70万台以上(うち国内は18万台)で、総走行距離は280億キロメートルに及ぶ。15年にわたって開発・販売してきたEVの知見を有効活用し、新型車では走行性能や充電性能、これら支える熱マネジメント技術などを進化させた。日本市場向けには電池容量78キロワット時の「B7」グレードに加え、55キロワット時の「B5」も展開する予定だ。
日産のEVのフラッグシップであるSUV「アリア」と同様、ルノーと共同開発したEV専用「CMF―EV」プラットフォームを採用した。ボディ形状もクロスオーバーSUVに刷新した。HVAC(空調ユニット)をモータールーム内に搭載するなどしたことから車内の足元は広く、フラットな床面を実現した。
新型車の最大のセールスポイントがWLTCモードで最大702キロメートルの航続距離で、先代と比べて約250キロメートル伸ばした。熱マネジメント技術の進化が寄与した。先代ではバラバラだった車内の空調システムと駆動用電池、モーターなどの温度管理システムを連携して統合制御する。例えばモーターや駆動用電池から発生する熱を空調に使うことで電力の消費を抑える。車載充電器から発生する熱も始動前の駆動用電池の温度管理に使用するなど、熱をムダなく利用するシステムを構築した。
空力性能を向上するためのボディ形状も航続距離を伸ばすのに寄与している。車体前方やルーフ後端の形状、スポイラーは角度までミリ単位でこだわった。国内仕様の空気抵抗係数(Cd値)は日産のクロスオーバーSUVとしてトップクラスの0.26を達成した。
走行性能は滑らかさにこだわり「ずっと乗り続けたくなるクルマ」を目指した。モーター、インバーター、減速機を一体化した新設計の「eアクスル」はサイズを1割減らしながら、トルクを4%向上した。ユニット全体の剛性も向上したことでモーターの振動の低減を図った。
シャシー性能の進化も図った。リアサスペンションは先代に採用していたトーションビーム式からアリアと同じマルチリンク式に変更、乗り心地の向上を図った。日本仕様では高速道路や市街地を走り込み、段差の乗り越えなども考慮して、専用のサスペンション部品を採用するとともに、乗り心地重視のセッティングとした。
ロングドライブでは必須となる充電性能も改善した。電池容量78キロワット時仕様で、電池残量10%から80%までの急速充電時間を90キロワット充電で約45分、150キロワットなら約35分とし、先代と比べて5~15分短縮した。
新型車のアピールポイントとなるのが「グーグルマップ」と連動したルート立案機能だ。目的地を設定すると距離や電池残量を加味して、車載システムが最適な充電スポットを提案する。急速充電できる充電スポットの案内に加え、電力消費を抑えられるルートも提案してくれる。ナビのルート情報は熱マネジメントシステムとも連携しており、駆動用電池の温度管理にもデータを活用する。とくに寒冷地仕様では、急速充電スポットに近づくと、到着後すぐに充電ができるよう、駆動用電池を予め温める機能も実装している。
24年度の国内新車市場でEVのシェアは1.5%程度(日産調べ)。新型車はEV購入のハードルとされる航続距離や充電時間、公共充電網の不足といった課題に対応することで、EV市場の開拓に期待する。
価格は518万8700円(消費税込み)からで、先代の60キロワット時電池搭載車より安価な設定にした。来年2月に発表予定のB5は、国からの購入補助金を適用することで実質350万円程度で購入できる価格を目指すという。
国内販売を担当する杉本全執行職は「価格もインフラも航続距離も、一つひとつ真摯に向き合ってきた。一度乗ってもらって(新型車の)良さを感じてほしい」と話す。新車販売増加で日産の経営を再建する上でも重要な役割を担う新型リーフ。1月の納車開始以降、市場での評価が注目される。

| 対象者 | 自動車業界 |
|---|
日刊自動車新聞11月13日掲載











