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2025年10月31日

〈JMS2025〉サプライヤー、生き残りへ新技術や事業展開 電動化や知能化を契機にエコシステム構築

「ジャパンモビリティショー(JMS)2025」では、新型車やコンセプトカーだけでなく、サプライヤー各社が2030年代を視野に入れた最新の部品や技術を披露している。電動化や知能化の進展が予想される中、自社の強みにデジタル技術やオープンイノベーションを掛け合わせ、未来のモビリティ市場で生き残ろうと火花を散らす。

 目立つのは〝ソフトウエア重視〟の潮流だ。独ロバート・ボッシュは「ソフトウェア ドリブン モビリティ」を打ち出し、ハードウエアに依存しないソフト基盤で機能を実装したり、更新したりする方向性を示す。日本法人、ボッシュ(横浜市都筑区)のクリスチャン・メッカー社長は「スマートフォンのように、車を買い替えることなく機能を拡張できる。未来のモビリティを示したい」と語った。

 これからは、部品ごとの固有機能が統合されるとともに、ソフト更新で長期間にわたる機能の更新や追加が可能になる。ソフトはもはや、制御のための〝附属物〟ではなく「価値の核」としてサプライチェーン(供給網)全体で重要度が高まりそうだ。

 システムインテグレーター大手のSCSKがコンセプトカーを披露しているのも象徴的だ。従来のティア1(一次部品メーカー)、ティア2といったレイヤー(層)構造ではなく、水平分業で新車開発に取り組む姿勢をアピールしている。

 電動化技術は多様化が進む。仏ヴァレオの日本法人は、48㌾対応のパワートレインや小型モビリティ向けのインバーター一体型モータージェネレーターなどを公開した。軽や小型電動車などでも活用できるソリューションを示す。コストと効率を両立させつつ、段階的に電動化を進める路線にも合いそうだ。ステア・バイ・ワイヤ技術も披露した。

 アステモ(竹内弘平社長、東京都千代田区)は、レアアース(希土類)を使わない駆動モーターを開発。幅広い出力に対応し、30年頃の実用化を目指す。

 エネルギー事業の展開も相次ぐ。デンソーは、水素製造などのエネルギー生成・管理技術を披露した。車載部品事業だけでなく、モビリティに関わるエネルギーソリューションを提供する姿勢を強める。車両だけでなく、施設や地域の電力インフラを含めた提案が他社でも増えている。

 近年、盛んな協業やエコシステム(生態系)のアピールは相変わらず多い。アイシンはAI(人工知能)エージェントを中心に研究機関やスタートアップと連携した未来観を示した。ユーザー体験(UX)や車内空間の再定義も相次ぐ。シャープはEVコンセプトを示し、車内を「止まっている時間」や「居住体験」として設計するビジョンを提示した。ソニーは、没入型エンターテインメントやバーチャルとリアルを融合させる技術を示した。

 サプライヤー各社は、部品単位の売り込みに加え、電動化や知能化を契機とした〝ソリューション・エコシステム〟の中でできるだけ優位な地位を築こうと、技術開発や事業展開を急ぐ。

対象者 自動車業界

日刊自動車新聞10月31日掲載